第7話・GWだぜ。ヒャッハー! その1

 4月が終わって5月上旬……そう、5月上旬と言えば、学生たちにとっての大きなイベントのひとつ……GW(ゴールデンウイーク)である!


・颯斗は語る

 去年まではただ勉強する時間にしか使っていなかったGWだが……今年はなんだか違うGWになりそうな気がするのは気のせいではない気がした。


 GW前日の放課後にて……

颯斗は蜜奈と一緒に帰り道を歩いていた。

 蜜奈は颯斗の左腕に抱き付き、颯斗はそのせいでフラフラと不安定な歩きになっている。

(歩きづらい……)

颯斗はそう思いながら困った顔で歩いていると、蜜奈は颯斗にこんなことを言いだした。

「颯斗さん、明後日の午後空いてますか?」

 そう聞かれた颯斗は相変わらず勉強以外の予定しかなかったこともあり「特には無いけど」と答えると、蜜奈はスマホを取り出しながらこう言った。

「一緒に映画観に行きませんか? 面白そうな映画の予告を以前見つけたんです」

どんな映画を見るのか? 気になった颯斗は「ちなみにどんな映画を観るの?」見に行く予定の映画のタイトルを尋ねる。

「2つほど観たいモノがあるのでまだ少し悩んでいるのですが……「灯台の下で」と「ローカルロマンチスト」のどちらかにしようかと……」

そして、その日の夜……

颯斗はパジャマ姿で嵐斗の部屋のドアをコンコンとノックした。

「嵐斗! 入るぞ?」

 そう言って扉を開けると、颯斗が見たモノは自分達の部屋とは似つかない町工場の工房のような部屋で作業台で遮光面で顔を覆い、ジーッ! と溶接作業をしているカーキ色のツナギ姿の嵐斗がいた。

 颯斗は一度バタンと扉を閉めて右手で眉間をつまみながらため息をつく。

「ウチの家ってあんな部屋あったけ?」

そう呟くと、ツナギ姿の嵐斗が「兄さん、なんか用?」と扉を開けて出てきた。

用件を話した颯斗は嵐斗の部屋に入った。縦長の机をⅬ字に並べており、右側にノートパソコン、正面には颯斗と違い教本などの勉強道具ではなく。ライトスタンドと固定式の拡大鏡にプレスクランプ、赤の金属製の工具箱と長さ1m・太さ3cmの筒状のモノが椅子に立てかけられていた。

嵐斗の部屋は颯斗や依吹の部屋と比べて色々な物が置かれていることもあり、少し圧迫感がある。

 しかし、散らかっているというわけでもなく。サバゲーで使う装備が入った黒のバックやガンケースはベットの下に、サバゲーで着る迷彩服を含め、上着などの類もワードローブのハンガーにかけてある。


・颯斗は語る

 さて、さっき見たのはただの幻覚だということにして、俺が嵐斗の部屋に用があったのは明後日に行く映画の情報を調べてもらうためだった。

スマホで調べると言う手もあったが、俺のスマホは中学1年の時から使い続けていたこともあり、処理速度が酷く悪いうえに回線もWi‐Fiに繋いでも接続エラーが頻繁に起こるのだ。


 嵐斗はノートパソコンを起動してネットで颯斗が観に行く映画の情報を調べた。

「ああ……これか……部内でも先輩たちが色々言ってたけど、悪くはないと思うよ?」

颯斗は「そうか」と相槌を打つと、嵐斗は少し気になっていたことを尋ねた。

「ところでさ……兄さんチケットの買い方は知ってるよね?」

流石にがり勉でもそれぐらいは知っている。

「お前は俺の事を引きこもりか何かと勘違いしてるのか? 学生証持っていけば割引になるぐらいまで知ってるぞ?」

 嵐斗は「ふーん」と言いながら、立てかけてあった筒を手に取った。

筒を何に使うのか気になった颯斗は「ところでそのパイプは何だ?」と尋ねると嵐斗は明日の予定を話した。

「昨日、大雨が降ってたろ? その影響で農業やってる先輩の実家の畑がやられてさ。今日の部内会議で工兵部隊を編成することになって俺も呼ばれたからバンガロール(地雷や鉄条網など爆破撤去するための工兵装備で別名・破壊筒)を持ってくことにした」

それを聞いた颯斗は「どんな被害を受けたんだよ?」と疑問に思うのであった。

 翌朝、中町宅にて……

蜜奈はハンガーにかかった白のフリフリのワンピースを右手に水色のYシャツを左手に持って姿見の前で悩んでいた。

「うーん……ワンピースの上に羽織った方がいいかな?」

そんな風に悩んでいると、風呂上がりの火照り顔の杏奈が部屋に入って「蜜奈! お風呂空いたよ?」と声をかける。

 蜜奈は「うん、解った!」と答えて、両手に持っていた服をベットの上に置き、バスルームへ向かった。

 湯煙が立ち込めるバスルームにて……

チャポンと湯船につかりながら蜜奈は明後日のデートの事を妄想していた。

 今日の放課後のように颯斗の左腕に抱き付きながら館内を歩いたり、Sサイズのポップコーンを2人でシェアしながら映画を観たりなど、明後日の予定に既に頭の中で颯斗とのランデブーを妄想していた。

(ああっ! 明後日が待ち遠しい! 早く颯斗さんと過ごしたい!)

蜜奈は両腕を真上に伸ばしながら、蜜奈は心の中でそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る