第4話

「今回の商品は穴無しでございます」


 魔力を取り入れ、もしくは放出するには穴のようなものを通って行っていると考えられている。まれに、魔力を持たない子が生まれるが、そのような子はこの穴に障害があるといわれ、転じてと呼ばれているのだった。


「なるほど」


 たしかにそれなれば、第一関門であるを単純に克服することができるかもしれない。というかそもそもそれを感じない、という話である。ヴェルニーナの力の源は常人よりはるかに高い魔力がひとつなのだから。


 前回と同じ轍は踏まない、というリズリーの確たる意思を感じる仕事ぶりである。


 つまり、あとは、ヴェルニーナの容姿を受け入れさえすれば問題はなくなる。

 そこもかなり難しいのでは?と思わないでもない―――いや、かなり思うが、いままでよりははるかに条件は良い話なのは確かである。


「顔あわせ致しまして、問題がないようでしたら一度お試しになる、というのはいかがでしょうか。一緒に暮らしてみて慣れるということも大切でございましょうし。」

「…………」

「うまくいかなければ返品も受け付ける、ということで」

「そこまでしていいのか」

「かまいませんわ」


 リズリーが言うには、そもそもが悪条件の商品という話である。言葉が通じない上に穴無し、というのは確かに買い叩かれても文句は言えないであろう。本来どちらの問題も、生活するのも苦労する条件である。わざわざ大金を出して買おうとする物好きも少ないであろう。


 でも私ならそれなりの金額を出すと思われていそう……


 と、ヴェルニーナが考えていると扉が叩かれる音がした。


「あら、きたようですわね。入ってちょうだい」

「え、ちょっと待……」


 ヴェルニーナが声をかける前に扉が開かれる。足音から三人、うち一人が室内に入ったことをヴェルニーナは把握する。こういう能力は高い彼女であったが、それゆえ無駄に緊張を強いられていた。


「さ、ご覧になってください」

「いや、まだ心の準備が……」

「ささ、おきになさらず」

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