柵を越える話

haruhi8128

柵を越える話

 今日、私は初めてあの高い柵を越えた。

物心ついた時から知っていたあの柵。

越えることなど考えもしていなかったあの柵。

あの柵を、今日、初めて越えることが出来た。


 この柵1つを越えたところでなんの意味もないのかもしれない。

この先にはまだ無数の柵があるのだから。


 この柵を越えることになど、何の意味もないのかもしれない。

私も昔は、なんと非合理的なことをしているのだろうと思っていたのだから。


 だが、今なら少しわかる気がする。

この柵を越えていった人たちが、なぜそんなことをしていたのか。

答えは柵を越えた先にしかないのだ。

やってみなければ、何も始まらない。


 まだ、先は長い。

私にこの全てを越えることが出来るのか、想像もつかない。

ましてや、この道を進んでいった偉大なる先人たちに追い付くどころか、その背中を見つけることすら難しいのかもしれない。


 だけど、こんなところで止まっていられない。

柵を1つ越えただけで見える世界があったのだ。

その全てを越えた先には、一体どんな世界が待っているのだろうか。

今はまだ、1つ越えることで精一杯だが、いつか、その悉くを乗り越えて見せよう。

そしてその先にあるなにかとやらを見つけてやろうではないか。



 そう、これは。

短距離走に子供の頃から触れてきた少女がハードル走に転向する物語。

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