Dear

槻坂凪桜

第1話

「良いんじゃないか?お前に赤はよく映える」


 …私を救ってくれた言葉が今では枷になっているなんて、考えもつかなかった。




 紡いだ思い出も寄り添った記憶も、未だに捨て切れないから。


 …幸せだったから。





『は…?どういう事だよ」


『…そのままの意味だ。俺の事は忘れる』





「…出来るかよ、バァカ」


 なんて唇を歪めて、あたしは熱狂する会場へと足を踏み出した。




 …赤いギターも塗りたくった口紅も、君と色違いの赤いメッシュも、いつまでも過去を拭い去れないあたしの弱さだから。

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