第96話:現状把握
―――エンプレス・ロアのメンバーはカフェまで帰還した。
もう時間も遅かったが、ここはコミュニティーを優先して貰うことにした。
今の状況を全員が正確に把握しているかも含めて、今後どう動いていくかの方策を練らねばならなかった。
まずは明璃と怜司からも話を聞いて、楓人とカンナも全員に向けて話をした。
謎は新たに増えて、アスタロトを知っている紅髪の男の正体だ。
それらも含めて、現状の整理から始めることにして以前に購入したホワイトボードを久しぶりに引っ張り出す。
「色々あってこんがらがってるからな。一度、状況を全て整理するぞ」
そして、ホワイトボードに頭の中で整理していた内容を順番に書き出していく。
時間も遅いので箇条書きで時間短縮して、出来るだけメンバーを早めに休ませる為に尽力する。
以前から整理していたメモはあったが、筆跡もめちゃくちゃで読めなかったので簡単に書き直した。
「字汚いわね・・・・・・」
「・・・・・・うるさいぞ、燐花」
書き終わったメモを見直して内容に不備がないかを確認して、ホワイトボードの前に立って話を始めた。
「まずは現状、整理しなきゃいけないのは獣とやった時から今までの全てだ」
ボードには順番に現状で解明すべき謎と解明された謎が整理されている。
―——纏めると、全ての初まりは獣を操り殺人を犯した変異者からだ。
所謂、鋼の獣はレギオン・レイドに所属していながら、マッド・ハッカーの殺人肯定主義へと裏切って暴走に近い状態まで行った。
それを殺害したのは本人の言葉を信じるなら白銀の騎士で、その事件についてのロア・ガーデンへの書き込みがきっかけでレギオン・レイドの恵と出会った。
だが、そこで残る謎はなぜ白銀の騎士はレギオン・レイドに情報を流して呼び寄せたのか。
まるで二つのコミュニティーが出会うことで何かが起こると確信していたように。
そして、コミュニティー同士で組んだ結果として烏間は行動を起こしたが、どこまでが白銀の騎士の計算だったのかはわかっていない状態だ。
「とりあえず、こうして整理してみると最初の事件からずっと繋がってるんだよな。それが偶然かは何とも言えないけどさ」
「今はわからないことが多いですからね。推測しかできません」
「私はあんまり力になれそうにないね・・・・・・」
「こればっかりは仕方ないだろ。カンナは十分働いてくれてるよ」
さすがの怜司も現状では明確な結論は出すことは出来ないと匙を投げ、肩を落とすカンナを軽くフォローしておく。
更に状況整理は続き、一同の目線はもう一度ホワイトボードへと戻った。
そして、烏間に渡と共同で挑んだわけだが得られた情報は複数あった。
烏間は殺人者同士を殺し合わせて変異者の数を減らし、役割分担を行うことで円滑に管理しようと持ち掛けて来た。
しかし、それらは恐らく渡が看破したように己の快楽を満たそうとする行いの可能性が高く、烏間と組んだとしても殺人ギルドの肩書と役割は残るだろうと踏んだ。
交渉の中で得られた情報はまず大災害には一人の変異者が関わっていること。
そして、何故かスカーレット・フォースと名乗るコミュニティーが一時的に烏間に協力したこと。
烏間も大災害に関して何かを知っている可能性が高いが今となっては居所も知れない状況である。
「あー、何か頭こんがらがってきたわ。あたし、こういうの苦手なのよ」
「お前の根性ならいける。俺は燐花のそういうところは一級品だと思ってるからな」
「・・・・・・それ、喜んでいいわけ?」
既に疲労の色が見える燐花を宥めるが、とりあえず一服することにして冷たい麦茶を全員に振る舞ってから再開した。
残りは現状で変異者が持つ謎のみを総纏めし、簡単に記述して締める。
楓人のメモより抜粋した内容は以下のようになった。
■スカーレット・フォース
・明璃が会ったのはリーダー?コミュニティーの目的は?
・なぜ烏間や人形の操者と共に戦ったのか。
・大災害との関わりがあるのかどうか。大災害前は
■マッド・ハッカー
・烏間は今後、どう動こうとしているのか。
・紅髪の男との関係、大災害について知っていることは何なのか。
■白銀の騎士
・何の目的でエンプレス・ロアを助けたり攻撃したりと一貫性のない行動を取っているのか。
・正体は誰?同じく大災害について知っている?
■その他
・学校に変異者が現れると情報を流し、梶浦が雇われるきっかけを作ったのは誰か。何の目的で?
■現状で発生した事件
・人形使いとドッペルゲンガーの目的、両者は組んでいるのか。
・なぜ人形使いは楓人達をあれだけ完璧に待ち構えることが出来たのか。どこかに情報源があった?
「変異者が直接絡んでないものを除けば大筋はこんなものだろ。あんまり細かくやっても仕方がないからざっくりとした内容になったけどな。燐花、生きてるか?」
「生きてるわよ。お気遣いどーも」
どうやら燐花が眠りに落ちる前には終わらせることが出来たようだった。
何にせよ、変異者達を巡る謎は未だにこれだけあるのだ。
きっと、この謎を解明することが変異者や
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