第8話 『サッカーボーイ』
『サッカーボーイ』
大武ユキ(柴田文明)
わたしわ、とても楽しくて、本当に好きなものに出会った時の気持ちを覚えている。
わくわくして、時間が過ぎることを忘れるほどに楽しくて、
わたしわずっと、ずっとそれを続けていたいと思うんだ。
それを失いそうな時、どれほど苦しいのかも知ってる。
―――
「俺からサッカーを
とりあげないで下さい。
「サッカー以外何もいりません!」
―――
わたしわ、書かれていたあの言葉に涙が出た。
それが当たり前になっているときわ、気づいていないよね…。
とても好きなことも、自分の大事なものだってことも…。
無くす瞬間に初めて気づくんだよね。ああいったことは…。
そしてだいたいわ、もう手遅れだってわかるの…。
わたしわ、主人公の森くんが、
とても好きで大切だと思っているサッカーを、無くしてしまう前に大事だって気づけて良かったと思っているよ。
だから森くんにそのことを気づかせた、チームメイトの土屋くんやヤスくんを褒めたい。
さすが!
『サッカーボーイ』はヒューマンドラマです。
サッカーのお話というよりも、サッカーを好きな森くんと、その周りの人たちの物語です。
みんなわ普通の世界で、サッカーと日常のある瞬間を生きてます。
永遠には続かない。
でも、だからみんな生き生きと、あの世界で生きているんだね!
ありがとう、みなはらさん。
わたしわまたひとつ、好きな世界に出会えたの。
いつか、猫又ちゃんと一緒にサッカーを観にいってみようかしらね♪
−あとがきのようなもの−
―――
「おれはまだ覚えいるんだ。
あの時打てなかったシュートの感触を…」
―――
確か、本の帯か裏表紙にそんな言葉が書かれていたような気がします。
ある時に本屋で出会い、読んだこの物語は、
主人公が高校サッカーの最後の試合で悔いを残して負けて、大学でサッカーを続けることを決めたというものでした。
とはいっても、物語はサッカーの練習や試合を描き積み重ねてゆく物語ではなかったのですね。
社会に出てゆく前のわずかな猶予期間を、大学進学で延ばした主人公。
彼やチームメイトたちへと立ちはだかるものは、サッカーの対戦相手だけはでなく、家族や周りとのしがらみという社会的な常識や、就職や進路というサッカー以外の出来事が当たり前のように起こります。
主人公やチームメイトは、そういうものに対しながら、サッカーを中心として生きています。
これはそういった青春群像劇のような物語でした。
サッカーで練習をしてさまざまな努力をし、
試合に勝って大会に優勝して、栄光の道のりを進んでゆく。
そういった物語も好きですし読みますが、
自分はこういう地に足の着いたような物語も好きです。
人が生きているという感じを受けるからでしょうか?
人は努力した結果だけ報いられて欲しいのです。物語はハッピーエンドで終わって欲しい。
でもそれ以上に、その世界を生き生きと生きて欲しいのかもしれません。
このお話は栄光をつかむお話ではないのかもしれませんが、
でも彼らはあの世界でしっかりと生きていた。
今回読み返して、そんなことを思いました。
以上です。
以下は余談です(笑)
当時、柴田文明という名前で書かれていた大武ユキさんのサッカーボーイという物語は、妙に心に残るものでした。
大武ユキさんは、このあとに高校サッカーの物語『我らの流儀』を描き、
その後にサッカーとは関係ないコンピューターゲームの外伝的なお話や、自ら書いたサッカーのキャラを登場させた麻雀ものの物語を描かれたりしていたようです。←全ては見ていませんが、麻雀ものは面白く読んでいました。
その後、『フットボールネーション』という物語を描かれ、『サッカーボーイ』の主人公の高校、大学時代のチームメイトが出たりするものとして、時系列のつながった、続編ではない物語を発表されておりました。
当時、この『サッカーボーイ』を妹に面白いと薦めたら、
その人(大学の)マン研の先輩(OGだったかな?)と言われ、とても驚いたことを覚えています。
初め、男の人かと思っていたんです。←柴田文明だから(笑)
あの頃は、なんというか、プロ、セミプロのような人を見かける機会が多かったのかな。そんなふうにも感じます。←いや、今も変わりませんね(笑)、業界が変わっただけです。たまにゆくギャラリーも、いろんな方がいらっしゃいます。
懐かしくなって、当時お会いしたり、すれ違ったりした人について、過去のことをいろいろ書いてみたのですが、長くなりましたので割愛いたしますね(笑)←ご希望があれば出しますが蛇足の蛇足ですね。未校正ですし、あまり関係ない話題かと(苦笑)
最後に、あの頃の思い出と繋がる時期に読んだ作品の中でも、
サッカーボーイという物語は、ただ好きであるだけではなく、いろんな想いが潜んでいた物語でした。
学生時代からいろんな進路へと進んだ友人、知人。
ちょっと見かけた、業界で頑張っていた人。
そこへ飛び込んで行った人たち。
そういった人と、サッカーボーイのなかで登場した人たちの、その想いと意志が、自分自身のいろんな思い出と混じり合って、
モザイクのような輝きと暗さを放ちながら、自分の思い出の中にありますね。
自分には、過去の扉を開く鍵のひとつなんです。このサッカーボーイは(笑)
きつね、あやはの感想文 みなはら @minahara
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