第2話 ワクワクの『魔導人形博覧会』です
「わぁぁぁ……!」
会場に着いた途端、私は目を奪われました。
――ドール、ドール、ドール、ドール!
そこではたくさんの人がたくさんの『魔導人形』を連れて歩き、どこを見てもドールでいっぱい! 驚きと感動で胸のドキドキが止まりません!
「エリーさん見てください! ドールがいっぱいです! わぁ、あのドールはどこから来たのかな、見たことのない素体です! 可愛くて綺麗だなぁ。あっ! あっちのドールは大きくてかっこいい! バトルタイプなんでしょうか? ああっ! 魔族タイプまで! すごいすごい!」
「わかりましたから腕を引っ張らないでください! 今日はドール展なのですから、世界中からいろんなドールが来て当たり前でしょう。少し落ち着きなさいませ!」
「えへへ、ごめんなさい。でもでも、こんなにたくさんのドールが居る場所なんて初めてで、つい興奮してしまいました。どの子のみんなやる気まんまんで、
「またドールの声が聞こえる、というやつですか? 人語を話せるドールなんて最高級品だけでしょうに。まったくもう、相変わらずのドール馬鹿ですわね。ユーリシア様も、とんだ孫娘を持ってしまったものですわ」
エリーさんに呆れられてしまいました。けれど、やっぱりどうしても胸が高鳴ります!
――『
それは、『
ドールは魔力をエネルギー媒体へ変換することで長時間の精密稼働を行うことが出来るので、カスタマイズ次第で重たい荷物を運んだり、店番をしたり、御者台に座ったり、おつかいをしたり、子どもと一緒に遊んだり。いろいろなことが出来ます。もちろんカスタマイズによってドールの使い方は十人十色。現在では、世界中で新たな『魔導人形』が開発され、人々の生活を助けてくれているのです。そんなドールを製作する人を『
私は、小さい頃からドールが大好きでした。それはきっと、エリーさんも口にしたお祖母ちゃんの影響が大きいでしょう。
私の祖母――『ユーリシア・パルルミッタ』は『伝説の錬金術師』と呼ばれるような人で、『魔導核』を錬金術によって生みだし、初めて『魔導人形』を創りだしたすごい人なのです!
小さい頃からお祖母ちゃんの工房に入り浸っていた私は、やがて自分でドールを作ることにも興味を持ち、6歳の頃にお祖母ちゃんからカスタマイズパーツを借りて、オリジナルドールの『ニナ』を創り始めました。お祖母ちゃんが亡くなってからは、お祖母ちゃんの工房を継ぐためにドールの勉強を続けつつ、ニナを完成させるために一所懸命でした。
そんなとき、有望な『魔導人形技師』の育成を行う王都の学院に招待を受け、私はここにやってきました。学院でドールの勉強をしながらニナのカスタマイズを続ける毎日は、本当にやりがいがあって楽しいです!
「ふふっ。王都のドール展覧会に来られるなんて、夢みたいです。村にいた頃は、ただ憧れているだけでしたから」
「見るだけではありませんわよ。貴女も参加するのでしょう? そのためにニナさんを連れてきたのでありませんか」
「だけど私……本当はニナをエントリーするつもりはなかったんです。『ルックス部門』とはいえ、未完成のドールを展示するのは失礼ではないかなと……」
「お気持ちはわかりますが、『ルックス部門』は素体のカスタマイズを嗜むもの。動けなくとも問題はないのでしょう? それに、ニナさんは私が見てもご立派な姿をしていますわ。幼い頃より王都でたくさんのドールを見てきたわたくしが言うのですから間違いありません!」
「エリーさん……」
「ニナさんは貴女が手塩にかけて作り上げた自慢の子なのですから、是非この機会に多くの方に見て頂くべきです。そうすれば、いずれ貴女が独立して工房を開くのにもきっと役立つことでしょう」
そう言いながら、エリーさんはニナの頭を撫でてくれました。
エリーさんは、本当に優しい人です。
立派な貴族の令嬢でありながら、王都に出てきたばかりのぼうっとした田舎者の私に良くしてくれて、初めての友達になってくれて。王都では私の初めてのお客さんにもなってくれました。
今、エリーさんの隣に立つ騎士の姿をした凜々しいドール――『ローラ』は、私がカスタマイズした子なのです。ローラは『バトルタイプ』と呼ばれる種類のドールで、用心棒として日々エリーさんを守ってくれています。そのために、ローラのカスタマイズにはとにかく気合いを入れました。
「さぁ、エントリーに参りましょう。『伝説の孫娘』ここに在り、そう知らしめてやるのです!」
「あっ、は、はいっ」
エリーさんに手を引っ張られて歩きます。ニナは、ローラが台車に乗せて運んでくれていました。
私一人では、今、こうして王都で充実した暮らしを送ることは出来ていないかもしれません。
私は、エリーさんの後ろ姿を見つめながら手を握り返しました。
「エリーさん」
「なんです? ほら、あっちですわよ」
「私、エリーさんのことが大好きです」
「んにゃっ!? な、な、なんです突然! というか! そ、それはさっきも聞きましたわ! ほらもう行きますわよ! 締めきりになってしまいます!」
「はいっ」
赤くなるエリーさんと手を繋ぎながら、私はここに来てよかったと、改めてそう感じていました。
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