カウンター

R・S・ムスカリ

序幕

 暦が千の年に達しようという時代。

 竜の息の風が吹く砂漠に、ゴライアと呼ばれる砂の都があった。


 都に集まりしは、海千山千の冒険家達。

 ある者は夢を叶えて富を築き、またある者は魔物の犠牲となって散り果てる。


 そんな彼らの仮宿となるのが、酒場兼冒険家の社交場――通称『アドベンチャーズ・ユニオン』。

 冒険家が日の出と共に出立し、日が落ちる頃には帰る場所。


 ここユニオンで、酒場のウェイトレスの次に冒険家と接する機会が多いのが、専属工房の鍛冶職人である。

 日がな一日、工房で武具の製造に精を出す職人こそ、千夜一夜の武勇伝の陰の立役者。


 鍛冶職人は実現する。

 ――敵意を打ち砕く矛を。脅威をはねつける盾を。


 冒険家は求める。

 ――よりよく魔物を屠れる武器を。よりよく護れる丈夫な防具を。


 利害の一致。

 工房のカウンターには、今日も客が訪れる。

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