一筋のミシン糸


一筋の赤い糸が

線引きする

体と痛みを

赤い一筋のミシン糸が

スッと私を切り分ける


初めは一筋のミシン糸だった

網目を編んだり

文字を縫い付けたりもした


仕事中

排泄物の如き痛みを流すために

鏡張りの白い空間へ駆け込み

一筋のミシン糸が

燃える毛糸になったときもあった


ある日

私は不本意な理由で

仕事を辞めざるを得なくなった


それが私と

一筋のミシン糸との決別だった


あれから約一年


私は一度もあなたを見ていない

赤いあなたはいないけど

白いタコ糸のあなたがいる

一生ここにいる

私が死んでもここにいる


たまに真っ赤なあなたが恋しくなる時もあるけど

もう、大丈夫

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る