スニーカーで連れ出して

@ageruu

お洒落なカフェのランチってびっくりするほど量少ない


「明日何時どこ集合?」

「13時に渋谷のハチ公前改札で」

結果渋谷に集合するパターンはいつもと変わらない。私とアキの集合場所はいつだって渋谷だ。大体お昼過ぎあたりに集合して(うまくいけば)その後すぐにお昼ご飯を食べるのだが、お洒落で映えるカフェに行くために、お昼ご飯はなるべく安く済ませたい+ガッツリ食べたいので、そこら辺にあるラーメン屋で油そばを食べるか、チェーン店の大盛りご飯のハンバーグランチとか、適当にボリュームのあるものを食べる。お洒落カフェのランチは大体量が少なくて全然満足できないのはもう把握済みだから、どこかで手軽に満腹になってから行くくらいが丁度いい。

行きつけの古着屋をぶらつき、安くて可愛い服に出会うために服を漁る。ついでに店内にいる客と店員を見渡し、「あの人はお洒落だし背が高くてかっこいいなあ」とか、「あいつはこの場所の雰囲気に合ってないだろどーみても」とか、勝手にランク付けと言うか、自分の中でアリかナシかを判断するとゆう相手からしたら死ぬほど迷惑で死ぬほどお前なんかに言われたくねーよって事を心の中で繰り広げている。昔からそうだが、一年前に東京に上京してからその癖のようなものは、いつしか私の日常の当たり前みたいなものになっていた。

「みてあの人かっこよくない?」「どれよ」

「あのパーマにヒゲで、白Tにダボっとしたパンツにスニーカーの」

「いやかっこいいわ、あれわ」

明治神宮前の、一階はセレクトショップが入ってる建物の二階にあるカフェの端のソファに座り、ガラス張りの店内から外を歩いてるお洒落男を見つけては、お互いに報告し合い、アリかナシかを議論する低レベルなやりとりを繰り返しながら、きちんと最近の近況報告をする。

「悠は最近どう?仕事は」「微妙かな〜。やっぱり辞めたいんだよねえ今のサロン」

「どしたのよ〜最近頑張ってたじゃん。またなんかあったの?」「別に何かあったわけじゃないんだけど、モチベーションも上がらないし、だるいなあって」

「でもわかる。私も最近全然モチベーション上がらないんだよね〜」

専門学校を卒業しネイリストを目指して上京してきた私は、社会人2年目になっていた。

「私らももうこっちきて2年目よ早くね?」「社会人としても2年目なんて、信じられない早さだわ」

「ほんとだよね、まだ若いうちにたくさん楽しまないとね?せっかく東京に来たんだし」


東北のど田舎育ちの私は、酷く東京に憧れていた。

SNS社会真っ只中、インスタなんかが流行ったせいで、沢山のお洒落なカフェや可愛いショップ、そこに出向いて写真を撮る、制服を着崩してメイクをした同世代の女の子達、私には刺激的な情報が一気にiPhoneの画面に溢れ出して、私はとてつもない劣等感に襲われた。

どうして同じ高校生なのにこうも環境や境遇が違うのか、どうして私はこんな山に田んぼに畑しかなくて、夜になると何百匹ものカエルの大合唱が繰り広げられるところに生まれてきてしまったのかと、悔やんでもどうしようもないことなのはわかっているのだが、それでもお願いだ悔やませてくれ頼むといった勢いで、画面の向こうでキラキラ笑っている子達が羨ましくて、その時期は永遠と自分の境遇を悔やみ続けながら、インスタの画面をスクロールする日々が続いた。

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