宇宙と星が似合う貴女に

おとうふ

熱病


僕は、貴女が好きだ。

初めて会ったあの日から今日までずっと貴女の傍に居たいと思い続けてきた。


最初の頃は会ってもどんなことを話せばいいのか分からず、好きな物、好きな色、好きな食べ物、好きな音楽、色々な質問を貴女に投げ掛け貴女はそれに耳を傾ける。

僕より身長が高くて笑顔が可愛い貴女は嫌な顔一つせず、僕の質問に答えてくれた。

とても優しい貴女に僕はどんどんと惹かれていった。


友人に「告白しないのか」と散々聞かれてその度に答えに迷った。

たしかに彼女のことが好きだが、これは恋愛なのか、と。

世間一般でいう恋愛としての好きを調べると大抵一緒に居たい、誰にも取られたくない、などと出てくる。そして最後の方に《欲情する》《性的に興奮する》とも出てくる。

でも僕は彼女に対して一緒に居たい、誰にも取られたくないと感じることはあっても、性的に興奮することはなかった。


それは彼女だけではない。今までの相手全員にそう言える。

だが友人は「そんなのは関係ない。ただお前が彼女とずっと居たいかが大事」と言ってくれてとても安心した。


たしかに彼女と一緒に居たい。

でも付き合うという事は、別れが発生する。それはもっと嫌なのだ。


もし彼女と付き合えたとしても、別れてしまったらもう友達に戻ることすら難しくなる。そのリスクを背負えるほどの覚悟は僕には持ち合わせていないのだ。

たしかに今以上の関係になれるのならこれ程嬉しいことは無い。ても彼女と遊べなくなるくらいならこの生温い関係を続けていきたい。

密かに辛い思いをするのは僕だけで十分なのだ。

大切な彼女と一緒にいるために、苦しむのは仕方がない。

それが彼女のためであり、何より僕の逃げなのだ。

向き合うことを恐れる僕の唯一の努力。


だが僕の心は彼女を求めている。誰かと話をしている姿を見るだけで心がざわつき、僕だけを見て欲しいと願ってしまう。


彼女の心が欲しい。僕を見て欲しい。でもこの関係を崩したくない。

そんな葛藤に揺られながら2年の月日が過ぎ、僕はズルズルとこの関係から抜け出す術を失った。

彼女と会う度、話をする度に熱病にも似た感覚が僕を支配する。人はこれを綺麗な言葉で恋や憧れと呼び、他の言葉では執着と呼ぶ。


恋など、僕には到底似合わない言葉。純粋無垢で真っ白な言葉に憧れがないといえば嘘になる。


貴女のためなら、僕はどんな人間にもなろう。他の人に嫌われようが、恐れられようが、貴女が笑ってくれるなら僕は何もかもを捨てる準備は出来ている。

あとは、貴女の心が僕を見てくれればそれでいい。


でもそんな日はこの先、一生来ることは無いだろう。


それを知っていて尚、

僕は今日も貴女を思っています。

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宇宙と星が似合う貴女に おとうふ @otoufu0644

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