「ネコ」の みーちゃん

高遠 そら

第1話「ネコ」

「ネコ」


私においしいたべものをくれ、

水をくれ、

ときどき毛をなんともいえない

ここちいいもので触り、

ときにいやがる私を無理矢理水に浸し、

あわあわにする。

2本の後ろ足で歩き、

前足は器用につかう。


彼らは私たちのことを総称してそう呼ぶ。


たいして彼らは「ニンゲン」と呼ぶらしい。



そしてニンゲンは、私たちそれぞれに、勝手に奇妙な名前をつけて呼んでくる。


私の場合は みーちゃん だ。


「みーみー鳴くからみーちゃんにしようか」


彼とはじめて出会ったとき彼はそう言った。

ニンゲンの世界で数えると産まれてから1週間くらいだったか。

すでに私は母親から「アレノ」という素晴らしい名前をもらっていたのにだ。


その日から私は母親と別れ、「みーちゃん」として彼と暮らすことになった。





なに。今の暮らしに文句がある訳じゃない。


名前が アレノ から みーちゃん に変わってしまったことは少し不満だが、彼との生活にはとても満足している。


名前は平凡になったが、きっとどの「ネコ」よりも幸せであるにちがいない。


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