Epilogue : A 3959通目のラブレター
――まだ見ぬキミへ。
これが、わたしから颯への最後のラブレター。
まだ読んでくれてるかな。読んでくれてたら、ありがとう。
ふたつ、お詫びしなくちゃいけないことがある。
ひとつ目は、ラブレターを一気に書いてしまったこと。
じつは2008年の終わりごろから、3959通、書き溜めはじめてました。ちなみにいまは2011年です。でも、キミならきっと受け止めてくれるって信じてたから、勢いに任せて一気に書いちゃった。
それで、1日1通ずつ送ることにした。でもそうでもしないと、わたしのことだから、さいごは書ききれなくなるって思ったんだ。
ふたつ目は、このラブレターを書くための、ほんとうのきっかけを隠してたこと。
わたしは2004年に、自分で死んでしまおうと思ったことがあった。逆戻りするのが、怖かった。気持ち悪かった。だから、身辺を片付けて死んでしまおうとした――けど、机の引き出しの中から、「未来のわたしへ」って書かれた封筒が見つかった。中身は、河津原ミナミっていう人からの手紙。
手紙によれば、河津原ミナミも、わたしと同じように逆行をしていたらしい。死にたいと思っていたらしい。でもその途中で、彼女と同じように若返り続ける男の子と出会って、世界が変わった、ってあった。それと、彼女も「未来のわたしへ」って書かれた手紙を見つけたんだって。
それを読んで、わたしはこう思った。きっと、運命はめぐりつづけるんだ、と。わたしもきっと、それに導かれてなにかを手にするんだと思った。そして颯に出会った。
颯に出会ったときから、わたしは確信していた。わたしの逆行が終わったとき、繰り返す運命をたどる、未来のわたしが生まれるんだ、って。
わたしと颯は20年かけて成長し、20年かけて若返った。
このあと、記憶や名前は帳消しにされるけれど、次の40年がはじまる。お互いのことは忘れてるけれど、どこかできっと出会えるんだ。
キミには、早くこのことを知らせるべきだったかな。けれど、わたしたちがわたしたちでいられる間は、次の40年のことを考えない方がいい気がしたの。だって、この40年の間でしか、わたしと颯は一緒にいられないから。
その特別な時間は代替がきかない。だからわざと、隠したんだ。
この手紙は、2040年に、キミにとどく予定です。そのころは、もうキミは颯じゃないか。
でも――キミは、生きのびる。わたしのことを、忘れてしまっても、絶対わたしを見つけてくれる。それまで、わたし、元気でいるようにするよ。
ぜったい、生きていてね。あの手紙に書いてあったんだ、もし死んだら、逆行のループが止まってしまうって。
まだ見ぬキミが、きっとこれを見てくれますように。
次のわたしが、キミに会えますように。
――瀬切マユより
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