ヤスミと頼子と真夜中に……《分割版》
シイカ
第1話ヤスミ
真夜中の電話というのは、概ね、良い話ではない。
「……そう。あの子、死んじゃったんだ」
頼子にとってヤスミが亡くなったと知っても、それは実感がわかない情報だった。
だから『ヤスミ』ではなく『あの子』で『亡くなった』じゃなくて『死んじゃった』なのだ。
今となっては、ヤスミの苗字も、名前が、どんな字を書くのかすら思い出せない。
その必要も無いからだけれど。
大学に入って二度目の夏。ひとり暮らしに慣れたせいか頼子のテンションは必要以上に上がっていた。
ちょっとでも自分が面白そうだと思うことには火遊びのリスクを充分に考えず行動を優先していた時期。 頼子はヤスミと出会った。
彼女は平均的なルックスより30点上くらいの可愛い子で、一緒に歩いていれば、それだけで、ちょっと自慢になる。
そんなタイプだったし、雰囲気や勢いに流されやすい性質でもあったので、まだ、たいして親しい訳でもないのに夕刻の城址公園をふたりで散歩しているとき、
ヤスミの意思確認無しに、いきなり抱きしめて唇をかさねてしまった。
おしとやかなキスではない。
ダイレクトに舌を絡ませる激しいやつだ。
サマードレスの上からだけど、小さくて柔らかな胸も手のひらに包んで、愛撫もした。
こういう強引な行為は女の子同士だと、大概、泣きながらのビンタを一発頬に受けて強制終了になるか、羞らいの感情を突き抜けて最後まで突っ走るかのどちらかと相場は決まっていて、賭け事に似たスリルが楽しい。
放任主義な私立女子中高育ちの頼子は、落ち着いてのゲームに慣れている。
結果は頼子の期待値以上で、ヤスミの反応は予想より遥かな魅力に満ちたものだった。
重ねた唇を、いちど離すと、ヤスミはサマードレスから露出した肩で息を荒げて頼子の身体にしがみつき、さっきより深く甘く頼子の唇を求めてきた。
「……あ……ん…っ……いい!」
頼子は痺れるような快感に、噛み締めた奥歯の間から吐息と一緒に歓喜を含んだ声を漏らしていた。
いつの間にかキュロットの隙間に滑り込んだヤスミの手は、もう頼子のショーツを分けて花びらさえまさぐっている。
……うそ…? この子、すごく上手……!
ここまで来たら、もう貰ったも同然だ。
頼子はヤスミの細身な身体を抱きしめ返しながら、しばし激しく舌を絡ませてから、真剣な表情でヤスミの顔を見つめた。
確かにハッとするタイプの美形じゃない。
かと言って、この子の容姿に文句を言うなら、当の頼子は明らかに、それより少し見劣りするはずだ。
……ふふふ。丁度いい子を捕まえた。
頼子は内心に、ほくそ笑んだ。
気軽にガールハントとアバンチュールを楽しむ癖のある頼子だが、多くの場合がそうであるように、子どもの頃から、この火遊びをしていた訳ではない。
初めての経験は大学生になって最初の夏。
相手は憧れていた先輩。
細身で長身。髪はベリーショート。メタルの黒縁眼鏡が似合うボーイッシュな先輩に今みたいに押し倒されて初めてのキスを経験して、数時間後の真夜中には、殆ど全てを経験していた。丘陵の中腹。麓から伸びる細い坂道に面して頂上が城址公園。左右が空き地の静かな賃貸マンション。一人暮らしの先輩の部屋は甘い匂いに満ちた楽園だった。
裸で歳上女性に甘えること、抱かれることの心地良さ。性の遊戯から得る肉体的な快感を覚えた頼子は、短い間だったけれど憧れた先輩の彼女になった。
短期間だった関係に後悔はない。頼子は純粋に同性とのSEXを愛したからだ。
実際的な火遊び行為は子どもにできる事ではなかったけれど、頼子は幼い頃から女性の美しい容姿や裸体に強い興味と魅力を感じる性質だったから、先輩に行為の手ほどきを受けてからは留め金が外れたみたいに次々と気に入った女の子に手を出した。
そんなせいか、べつにケンカをした訳ではなかったけれど、何となく先輩とは疎遠になって、気が付けば自然消滅を迎えていた。
先輩はひとりの相手と、じっくり恋を楽しみたいタイプなので頼子が連れてきた新しいGF《ガールフレンド》を交えての3Pが4Pになったあたりで疲れてしまったのだろう。
これは確かにデリカシーに欠けた頼子が悪いと自覚はあるし反省もした。
でも、頼子の恋の冒険はとどまらなかった。
現に今も、こうしてヤスミと新しい、でも、すぐに終わるだろう恋の始まりを楽しんでいる。
恋は始まった瞬間がいちばん高揚する。楽しいし、わくわくする。
流れに任せている間にも、ヤスミの細い指先は蜜に潤った花弁を押し分けて、頼子の中に入ってきていた。
……ウッ! 深い。奥にとどきそう……もっと……!
頼子は、今すぐにでも嬌声をあげながら翔んでしまいたい快さを必死に堪えながら思った。
ヤスミの裸が見たい。この子の花弁に舌を挿れたい。ふたりでめちゃめちゃに乱れたい。
「……ねえ。大きい声を出せるトコへ行こうよ。もっと……したい。……いいよね?」
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