自称プロゲーマーへ、ゲームから出てきたのがCERO Z 系ヒロインたちでも、受け止める(攻略する)ことができますか?
@gengorousan
第1話そのゲーム、実は異世界からの扉だった!
最近、流行りのプロゲーマー。
それに僕、大貝 昴はなることができた。……というか、ならざるを得なかったというのが本当のところだ。
なんで、そんなことになっちゃったんだろ?
なんて考えるのは、現実逃避でしかない。当事者である僕なら、そのろくでもない理由を、よーく知っていて然るべきなのだから。
理由 → 唯一の両親が居なくなったから。
両親は? → 逃亡中!
逃亡中? → 多額の借金を作ったからだよ!
ほんと、最低だ。
まあ、そんな理由で残された僕は、借金返済と生活費を稼ぐため、プロゲーマーになったわけだ。
といっても、子供の僕が、eスポーツのプロチーム入ったり、賞金がでる大会で大活躍して賞金を稼いだりなんてことは、出来るわけがない。
この年で、そんなことができる才能なんて、生い立ち以外平凡な僕にはなかった。
なら、どうやって賞金を稼いでいるのかというと、本当にプレイするだけでお金をくれるゲームがあるからだ。
そのゲーム『ダーク オブ カース』という、いかにも根暗そうでヤバめのタイトルの、実際ヤバいオンラインゲームだ。
どうヤバいかと言うと、まずグロい。
このゲーム、敵を倒した時、血が飛び散るし肉片も飛ぶし、街中でも拷問や惨殺の話が溢れていて、本当にグロい。
次に、登場人物のカッコがエロい。
このゲームに登場する種族は、他種多様で吸血鬼や、鬼、妖精みたいなやつらがいるんだけど、どいつもこいつも露出が酷い。そして、街の中に如何わしい連中や店が平然とあって、本当にエロい。
あと、映像がとてもきれいで動きも現実のように滑らかだから、余計にグロくてエロい。
なのにこのゲーム、年齢制限がないからヤバい。
絶対CERO D はあるよ、このゲーム。僕の見立てだと、CERO Zだ! どーなってんだよ、レーティング会社。
そして極めつけなのが、ゲームをプレイして払われる給料の出所が、不明なところだ。
お金の源泉がわからないし、口座を登録するところがないのに、口座にお金が振り込まれる。
意味不明でヤバい。
総括すると、すべてかなりヤバい。
よって、こんなゲームをする奴は、まともじゃないと言われている。
実際のところ、僕も追い詰められていなかったら、こんなゲームやってないと思う。
けど、今ではこれが生命線だ。ありがたくは思っているし、愛着も沸いてきた。
特に、今も一緒に探索をしている仲間NPCなんかその最たるものだ。
まず、回復役の吸血鬼娘、エイリ。侯爵令嬢、銀髪赤目の豊満な体形の彼女は、布の多いゴシックロリータファッションなのに、胸元や背中は空いていて、際どい衣装だ。
言動は冷淡と傲慢そのもので、エイリを守って怪我しても慇懃無礼な態度で「あら、傷つくなんて間抜けなのですね」とか「下僕」とかいちいち余計なことを言ってくる。
そのうえ、治すついでに吸血行為なんてしてくるから、傷は治っても貧血のバッドステータスがついて台無しにしてしまう。
なんなんだよ、こいつ。
次に、デバフ役の妖精娘、アリス。金髪碧眼の小学生体形の彼女は、ひたすら布が少ないファンシーな衣装だ。
言動は冷たく否定的で、「醜い。汚い。消えて」とか言って、敵を攪乱して僕を守ってくれる。
あと、どうやら他傷趣味があるらしく、たまにプラスの感情を出すと「楽しいね。昴」とかいって、持っているナイフでブスリと僕のキャラクターを刺してくる。せっかく守ってくれても、帳消しだ。
なんなんだよ、こいつ。
最後に、タンク兼アタッカー役の鬼娘、華凛。茶髪赤目の豊満な長身の彼女は、これまた露出の多い和装みたいな服装だ。
言動はなんかは母親っぽく「あら大丈夫、僕ちゃん。後ろに隠れていましょうね」とか言って守ってくれる。
あと、ボディタッチが多くて僕のキャラにいちいち口づけしてくるのがエロいし、貧血状態になった僕へ自分の血を飲ませてくるのが引く。
なんなんだよ、こいつ。
総じて、「なんなんだよ、こいつ」てキャラしかいない。
……ま、まあ、なんだかんだ言って悪いところが目立つヤバいキャラばっかだけど、美麗だし強いし少しは良いとこもあって情が湧く、なかなか憎めない連中だよな?
そんな連中と、オールラウンダーで特殊技能を持った僕のキャラで冒険とお金稼ぎをしている。
そして、今日もいつも通り、その冒険をしていたんだけど、どうやら今日は勝手が違った。
特殊イベントでも始まったのか、普段はPCが先導するこのゲームで、今日は件の仲間キャラに連れられて、普段は入れない遺跡「ィクルウ」へやってきていた。
……なんだ、ここ?
ここは、一言でいって奇妙としか形容のしようがない建物だった。
壁の所々に、姿形を変える、丸やら四角やら三角やらで形容しがたい模様が描かれていて、気が狂いそうになる。中の造りもおかしく、トマソン物件みたいに開けた先が壁のドアや、先がない無意味な階段なんてものがある。
おおよそ、人が作ったとは思えないような意味不明な遺跡だった。
この異様な雰囲気にのまれ、僕の心臓はドキドキとしてきた。
確かにヤバめのゲームだけど、ここまで気持ちの悪い……いや、それを通り越して死にたくなるような造形物は、これまでなかったはずだ。いくらゲームだからって、こんなものまで造る?
そんな疑問に僕が苛まれていると、不意に明るい場所へついた。
そこは、気味が悪い装飾にまみれた部屋で、中央には赤く輝く宝玉が置かれている。
『ドクンドクン』
それを見て、なぜだか、心臓がドクンドクンと心を刺激してくる。
ここが、彼女達の目的の場所だろうか?
「独りよがりな契約により、人間には、準備期間が与えられた」
不意に、エイリがヤケに肉感的な声でしゃべりだした。それは冷冷とした、ドキリとするような透き通る声だ。
まるで、目の前にいるような臨場感。こいつ、こんな高音質な声だったか?
「契約者である混沌の神『ィクルウ』は、今日にでもその隔絶された扉を開くことだろう」
エイリは冷徹なさまで、何か重要なことを告げてくる。
『ドクドクドクドク』
その様に、なぜだか僕の心音が激しくなっていく。
「しかし、その前に、あなたへ会いに行って差し上げましょう。なぜなら——」
冷冷な声は、どんどんと実感を帯びてきた。
『ドキドキ』
いよいよ、僕の心臓は激しく心を叩いてくる。
「──あなた、私の『下僕』だから」
エイリが宝石へ、手を突っ込むと──
「なっ!!」
──ヌルリと、腕が眼前に出てきた?!
『バン!』
心臓が心を大きく叩く。
僕は、それに驚き椅子から転げ落ちて──
ガタン!!
「いった!」
──そして、パソコンから離れるように立ち上がる。
目の前に映る人影。そこにいるのは、さっきまでプレーしていたゲームのキャラクター達だった——!
「な、なんなんだ?!」
『ドキドキドキドキ』
僕の驚きの声は、彼女達にも聞こえているようで、各々の反応を見せてきた。
彼女達の一挙手一投足にドキドキドキドキと、心臓が心を激しく叩く。
「あら、気の利かないこと言うのですね。まあ、無知蒙昧な人間の下僕なら、この程度でしょう」
エイリはゲームと同じく、冷冷として傲慢だ。
「実物の昴ちゃんも、向こうと変わらず可愛らしくてうれしいわ」
華凛も、ゲームと同じく母親みたいな物言いだ。
「うれしいね。昴」
そんなことを言って、アリスもゲームと変わらず抱き着いてきた。
うん、アリスもゲームと変わらず?
突然、お腹が熱を帯びたように熱くなる。
彼女から離れて、お腹を触ってみると、べったりと手についていた。
赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い、ドロッとした液体が手についていた。
『ドクドク』
ドクドクと、心臓が心に濁流を作ってくる。
……ああ、ショックから正常な頭に戻って、やっと理解できた。これは、血だ。たくさんの血だ。
……そうか、そりゃそうだ。アリスもゲームと変わらないなら、こんなことやってくるよな。
僕は、力が抜けて床に倒れる。
そして、薄れていく意識の中、ニヤニヤと笑う彼女たちの顔だけが、鮮明に見えていた。
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