絶望を合わせ鏡に

相内結衣

絶望を合わせ鏡に

 落選の分かり切った面接の後の喫茶店。ガラスの衝立の向こう側に、この世の全てに絶望したように俯く就活生が。一瞬、ガラスではなく鏡であったかと錯覚する。なんだ、お前もダメだったのか。私は心の中で彼に声を掛ける。

 そこに、「ごめん、お待たせ」。レモネードのように爽やかな女の声。

 「梅雨時もおしゃれを楽しもう」。ファッション誌の一文が思い浮かぶような、白地に花柄のワンピース。

 彼が頭を上げる。その顔には、先ほどとは打って変わった、女を迎える翳りのない笑顔。

 …いや、違う。そうではない。初めから彼は落ち込んでなどいなかった。私が、私自身を、彼に投影していたのだ。私の暗い、泥のような思いを、彼に押し付けていたのだ。ガラス越しに、まさしく合わせ鏡のように。

 この世の全てに絶望したような顔で、私は店を出た。

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絶望を合わせ鏡に 相内結衣 @aiuchiyui

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