10話 大賢者である私の大戦略
「この部屋を使ってね」
リリーに案内された部屋は、王子の部屋と同等の豪華な部屋だった。
「ありがと。ちょっと疲れたから休憩させて」
「わかったわ。でも後で少しだけお話させてね」
「りょーかい」
「じゃ、後でね」
そう言うとリリー王女は部屋を後にした。
私は全然疲れていないけど、休憩といって一人の時間を作ることにしたのだ。
もちろんこれからの作戦を練る為である。
さてと、始めようか。
防音魔法『ダメ!盗聴!絶対』を起動。
これで騒いでもこの部屋の音が一切漏れることはない。
例え、カップルがあんな事や、こんな事をしていようがカップルの秘密が聞かれることはないのだ。
しかし残念な事にこの部屋にカップルはいない。
いるのは絶世の美女、つまり私がいるだけだ。
こんな豪華な部屋だし隣の部屋の音が聞こえるなんて無いのだけど、盗聴魔法というものが世の中にはあるので安心は出来ない。
次は覗き見対策をしよう。
って、あれ?なんだっけかな?魔法を思い出せない。
流石に私も使える魔法全てを覚えている訳ではない。
それはもう膨大な数だからだ。
前世の私は、魔導書に知りうる全ての魔法を記録していたけど今でも取り出せるかしら?
取り敢えず、前世ぶりに使ってみよう。
収納魔法『エルオスの無限バッグ』を起動。
500年前、セレブ御用達ブランドのNo1はエルオスだった。
収納魔法が使える私にバッグは必要無かったけど、せめて魔法にエルオスブランドの名前をつけたのだった。
そのために前世の私は、エルオスにブランド使用料を払った。
(かなり高額だったが後悔はない)
だから これはエルオス公認のブランド収納魔法なのだ!
今の時代でもエルオスあるのかな?
あったら、お金を稼いで買ってもいいな。
空間にできるスリット。
そのスリットに手を突っ込む。
どれどれ、あった。
私の魔導書『乙女の花園』を手に取る。
しかし、取り出す直前で思い留まった。
魔導書を手にとっている私をもし、リリー達に見られたら。
想像する。
アウトじゃん。
誰がどう見ても魔道士に見えてしまうだろう。
部屋の扉に魔法のロックをかけることは容易い。
しかしそれはヒーラーの使う術じゃない。
だから敢えてそのままにしている。
彼女たちが侵入する気になればできるのだ。
よし!
魔導書を収納空間から取り出した瞬間、
偽表紙魔法『ブックカバーに隠された真実はアダルトチック』を起動。(この間0.01秒)
魔導書に偽りの表紙をコーティングする。
これで誰が見ても私が持っているのは聖書だ。
ちなみに魔導書は開く必要はない。
私であれば、持つだけで知りたい情報を引き出せるのだ。
目的の魔法はと、あった!
では改めて!
偽映放送魔法『こちらは有料放送になります。ご了承の上お楽しみ下さい。』 を発動しつつ、映像のイメージをする。
もし、魔法による覗き見をした場合、この部屋にいる私は神に祈りを捧げているであろう。
魔導書はこれからもお世話になるだろうから表紙はこのままにしておくことにする。
再び『エルオスの無限バッグ』に仕舞う。
取り敢えずはOK。
私はベッドにダイブする!
ベッドはふかふかだった。
「うはー極上だ!」
仰向けになり今後の大戦略を練ろうか。
まずは反省からだ。
今日の失敗は私のリサーチ不足による。
500年前の常識は今の常識とは違うと思い知った。
クーンは今の時代の術者達は、永久付与魔法が使えないと言っていたっけ。
であれば、使えなくなった魔法は他にもあると考えた方がいいよね。
逆に私の知らない新たな技術や魔法もあるかも知れない。
今の時代のヒーラーの出来る事、出来ない事を知らなければ、またやらかしてしまうだろう。
この分析能力の高さが私の売りである。(291ね私)
この点を踏まえ、今夜の晩餐での作戦を練ろう。
今現在の状況はすこぶる不利である。
しかし、私の灰色の脳細胞は閃いた。(流石私だ)
この不利な状況こそ私に有利に働くのだと。
まず、私が孤児院にいた為、世間知らずであることを全面に押し出して、今日の内に私が『ただのヒーラー』であることに懐疑的な青薔薇の連中から必要な情報を聞き出す。
そうしたら次にきっちりと穏便に口封じをする。
彼女たちは今の私を『不思議な術を使うヒーラー』、略して『不思議なヒーラー』と思っている筈。
私の不思議な部分は神様から授かったとしておけば、『ちょっと不思議なヒーラー』に緩和されるに違いない。
そして神様から授かった力については口外出来ないし、彼女たちも口外してはいけない。
言ったら神罰が下ると、全て神様に押しつければいい。
完璧な作戦、これでイイのだ!
かつて魔王軍を手玉に取った私の作戦立案能力のかくも凄まじき事よ。
私の敵は私しかいない!
実に自分の才能が恐ろしい。
その時、誰かに見られている感じがした。
誰が覗いているのかも逆探知により判明。
しめしめ、見事に私の術にかかってくれてるね。
一心に祈る私の姿を見て涙したまえよ。クーンちゃん。
お代は貴女の魔力よん。
有料放送だからね。
Aランク冒険者の先輩とはいえ、魔道士としては遥かに格下だ。
油断は出来ないけど一番疑っている彼女が一番扱いやすいわ。
ふぁー!
欠伸が出る。
まだお昼前なのに眠くなって来ちゃった。
このベッド気持ち良すぎだよ。
方針の決まった私はいつの間にか眠り込んでしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ドアがノックされて、私は目が覚めた。
部屋に設置された時計を見る。
時計があるなんて流石VIPルーム。
時間は午後3時くらい。
取り敢えず全ての防犯魔法?を解除する。
ドアを開けるとリリー王女がいた。
「眠そうね。大丈夫?」
「祈りながらいつの間にか寝ちゃって。でももう大丈夫」
「なら少し話をしてもいい?」
「いいけど、勧誘ならお断りだよ?」
「先程はクーンが失礼したわね。リーダーとして謝罪します」
頭を下げるリリー王女。
「もういいよ。それより立ち話もなんだから入って」
ドアを開ける前にベッドのシワは魔法で取ってある。
この便利な魔法の名前は次の機会にでも。
私達はそれぞれ椅子に座り向かい合う。
さて、では彼女の話とやらを聞くとしましょう。
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