誰か、助けてくれ
野口マッハ剛(ごう)
原因は不明
「俺ら、ケンカは強いし、カッコいいから、あれじゃね? 一石二鳥って言うんじゃね?」
「あはは! お前、絶対一石二鳥の意味を知らないで言っているだろ!?」
俺はヤンキーの高校生。今日も学校をサボり、友人と二人で夜の駅前で騒いでいる。一石二鳥の意味? 知らないけど、なんかカッコいいじゃん、一石二鳥って。
今日の昼間は先輩に呼び出しをくらっていた。近々、暴走族に入らないか、とか、あーだこーだ。はっ! 俺は女の子にモテたらそれでいい。暴走族とかメンドイ、でもケンカはしたい。そう言えば、最近は警察とモメタっけ? あとがメンドイやつだったなぁ。あはは。
「今日もケンカ最強な俺らをSNSで発信するか!」
友人にそう言われて、俺ら二人は自撮りを投稿する。今日も、いいねがたくさん入る。あはは、楽しい!
すると、俺のスマホにSNSでメッセージがひとつ来た。なんだろうと思って開いてみる。
「逃がさないよ」
メッセージにはそう書いてある。誰からだろう、しかし、相手の情報はわからない。自己紹介は書かれていない、名前も適当にabcとかが書いてある。
俺は深く考えずに、そいつをブロックした。
それから数日間は友人と二人でバカをして遊んだ。暴走族なぁ、入るか入らないか。悩むなぁ。
「おい、これを見ろよ?」
友人が顔を青くしている。
なんだろう?
見せられたのは、俺ら二人の今までの自撮り。
「これがどうしたんだよ?」
「バカヤロウ! よく見ろよ!」
うん? ……あ、誰か女が写っているなぁ?
「この女がどうしたんだよ?」
「今までの自撮りをよく見てみろ?」
はあ? …………え、今までの自撮り全部にこの女が写っているだと?
「誰だよ? この女?」
「知らねえよ!? こいつ、ストーカーじゃね?」
あはは! と俺は笑い飛ばした。
「なに? お前、ビビってんのか?」
すると、SNSのメッセージが入る。
「逃がさないよ」
俺はメッセージの相手の情報を見た。やっぱり自己紹介がない、名前がabcなど適当になっている。ちょっと気持ち悪いなぁ?
俺はそいつをブロックした。
そして、先輩に呼び出しをくらって話が終わったあとに、俺らの自撮りに写っている女のことを話した。
「誰だ? この女?」
「いや、それがわからないっす」
「わかった、調べる」
そうして、また数日間がたった。
俺と友人は自撮りに写っている女の話をした。けれども警察には言えない。自分らでなんとかしないといけない。
先輩に呼び出しをくらった。
あの女についてだった。
「わかったんだよ。その写っている女はお前らと同じクラスの女子らしい。地味なヤツだろ? もう少し調べてみる」
俺はそれを聞いてそんなヤツいたっけ? と思い出そうとする。いや、やっぱり知らないヤツだ。
久しぶりに高校に行って、体育館の裏で集会をする。
俺はタバコを吸っていた。
だが、先輩が青くなった表情でやって来た。
そして、俺の胸ぐらをつかんでこう言った。
「お前よぉ? ふざけてんのか? あの写っている女、最近に自殺をしたんだよ!」
え、意味がわからないけど?
「自殺したあとにも、その女が写っているのは、どういうわけなんだよ!? 写真を加工したのか?」
とりあえず、俺は胸ぐらをつかまれたままこう言った。
「いや、知らないっすよ……? てか、なんで自殺した女が俺らの自撮りに写っているっすか? それに自殺の原因はなんすか?」
「原因が不明なんだよ!」
荒々しく俺は突き飛ばされた。
なんなんだよ!? クソが!
俺は集会のヤツらを見た。
その場の全員の表情が固まっていた。
さらに数日間がたった。先輩から呼び出しをくらった。その地味なヤツの遺書について聞かされた。どうやら、その地味女は俺のことが好きだったらしい。でも、自殺の原因は不明。先輩に言われて俺はその地味女の墓に行った。そして、手を合わせた。
正直に言うと気持ち悪い、俺らの自撮りになんで自殺した女が写っているのか? その日の晩、俺はスマホを片手にゴロゴロしていた。すると、急に体が動かなくなる。え、なんで?
「ねぇ? どうして私は死んだの?」
俺は心臓が止まるかと思った。俺の上に浮いていやがるヤツがそう言った。そいつは自殺した地味女だった。
「いじめられて私は耐えられなくて死んだの」
はあ!? そんなこと知るかよ? てか、体が動かねぇ?! どうなってんだよ! ちくしょう!
「私は君のことが好きだったのに」
え?
すると、地味女が消えた。
俺の体がまた動くようになった。汗がヤバい、いったいなんだったんだ?
「逃がさないよ」
「うわっ!」
スマホの画面を見て俺はそう叫んだ。
なんなんだよ!? ちくしょう!
俺はスマホを片手にそのユーザーをブロックした。汗がヤバい。俺、ヤバいんじゃね……?
いつの間にか寝ていたようだ。次の日の朝。あ、なんか思い出した。言えるワケがなかった。俺はしばらくじっと考える。そう言えばそうだった。俺はクラスの女子に、その地味女をいじめるようにと軽い冗談のつもりで言っていた。
いや、でも、まさかな? ありえない。クラスの女子は俺の言葉に笑っていたし、自殺にまで追い込むようなことはしていないだろう、俺はそう考えた。
しかし、クラスの女子から聞いた情報に俺は凍りついた。なんでそこまでした!? と俺は女子を責めた。けれども、クラスの女子は、お前がやれと言っただろうとしか答えない。だからって、そこまでしなくてもいいだろ!?
俺は胸くそ悪いと感じた。今日はもうさっさと家に帰った。なんで自殺した地味女の加害者が俺になるんだよ!? 俺は冗談のつもりで言っていただけだよ! ヤバい、その内に高校で問題になってしまう。俺は部屋で寝転がって、なんとかしようと思った。しかし、その時だった。
「ねぇ……聞こえる?」
俺は目を大きく見開いた。
またしても体が動かねぇ!
ヤバい、ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
目の前に、血まみれの地味女が浮いていやがる!
そして、すぐにフッと消えた地味女。
「う……う、うわああああああああああああ!」
ワケがわからない。俺は地味女の幽霊を見ていた。あ、そうだ。仲間の誰かに連絡しよう! しかし、誰も電話に出ない。ヤバい、いったいどうなってんだよ!?
それから、俺は毎晩のように、その地味女に怯える。体が動かなくなって、血まみれの地味女の幽霊が目の前に浮かんで何かを言って消える。俺はおかしくなっているのか? いや、そんなわけがない!
だが、俺はそのことを両親に話したら、病院に連れていかれた。それから、診察中に俺は体が動かなくなって、血まみれの地味女が現れて、また動けるようになった俺はパニックになった。すると、いつの間にか入院させられてしまった。
誰か、助けてくれ。いろんな病名をつけられる俺は日に日に頭がおかしくなっていくようだ。段々と入院してからベッドで寝たきりになる俺。時々、血まみれの地味女の幽霊が浮いていやがる。俺はその間は体が動かない。
「もう、君ってバカね?」
なんでSNSで逃がさないよっていうメッセージが来ていたんだろう? いま目の前に浮かんでいやがるこいつはなんなんだよ?
「私は君のことが好きなだけ」
確かに、俺は女の子にモテたらそれでいいって思ったけど、こんな血まみれの幽霊にまとわりつかれたくない。
「これからも、よろしくね? ふふ」
ふざけんなよ!? ちくしょう! クソが! 誰か、助けてくれ! 誰か! 誰か!
俺はどうなるんだ。一生をこいつに人生を狂わされるのか。どうなってんだよ。俺は血まみれの地味女がこう耳元で言ったのをはっきりと聞いた。
「逃がさないよ」
なあ。
なあ、誰か教えてくれ。
俺はどうなるんだ?
誰か、助けてくれ 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます