41話 私の妹愛が留まるところを知らないのでノーダメージだった件

 ぐふ、ぐふふふふ。


<やっぱアイリはテラかわゆす!>


 私の心境をあえて言うならそんな感じ。


 今、泣き疲れて眠ってしまったアイリをベッドに寝かし、久々のアイリの寝顔鑑賞をじっとり且つ、ねっとりと爆堪能中。

 マイ脳内メモリーにアイリの可愛いこの寝顔を焼き付ける。

 後日絵にしてしまおう。


 やっぱりお姉ちゃんアイリから卒業出来ない。

 ダメなお姉ちゃんでごめんなさい。

 久しぶりにアイリに会って、溢れ出る私のアイリ愛が爆発しそう。

 

 アイリに戻ってきてと言われた時には間髪淹れず『はい喜んで』と、言ってしまいそうになって焦ったわ。

 アンリの思いを私が踏みにじるところだった。

 危ない危ない。

 

 目を覚ましたアイリもすごく可愛くて、襲いかかりたい思いを堪えるのに必死だった。

 脳内花占いで襲う、襲わない、襲うってやってたら襲うになったけど、かろうじて理性が勝ったわ。

 暫く会わなかったから、反動でアイリ依存が悪化しちゃったかしら。

 自制心がどこまで持つのか試練の時なのね。


 最大の試練の時は寝るときだった。

 アイリが私に抱きついて寝ている。


 私は………


 寝れるわけないじゃないの!

 私の脳内ではあらゆる妄想が駆け巡っている。


 アイリのぬくもり……

 尊い、清らかでとても尊い。

 神様、この瞬間を有難うございます。


 ぬふふふふふふ。


 アイリのぬくもりを感じてお姉ちゃん大興奮よ。

 困ったわー。

 思考が暴走気味だけど勘弁してね。

 お姉ちゃんそれだけ舞い上がっているってことなのよ。

 


 お姉ちゃん、アイリの為に何かしてあげれる事無いかしら。

 アイリは疲れが溜まっているようだったから、癒やしの力を込めたクッキーを作って贈るのもいいかも知れないわね。


 お姉ちゃんのアイリ愛がたっぷりといつも以上に封じ込められたクッキー。

 それを美味しいそうに食べるアイリ。

 そしてアイリの疲れが吹き飛んで更にパワーアップするの。

 

 うふふ、うふ、ぐふ、ぐふふふ。

 ナイスだわ。

 さすが私。

 想像しただけで鼻血が出そうよ。


 そうよ、離れて暮らしていても私はアイリを愛でる事が出来るじゃないの。

 なんで今まで気づかなかったのかしら。

 

 よし、これからは影からこっそり愛でるからね。

 そうと決まればこうしては居られないわ。

 何が出来るのか思いつくこと全てメモリーしよう。

 とりあえず明日からフルパワーでクッキー焼くからね。


 取り敢えず今はアイリの寝顔を堪能よ。

 瞬きするのすら惜しいわ。 

 私は力を使って暗視出来るようにしているからアイリの寝顔を至近距離でバッチリ見れる。


 あ、もうちょっとアイリの顔が近ければキス出来るんじゃ。

 ぐぅ、惜しいもう少しなのに届かない。

 なんてことなの、こんなチャンスはもう来ないのかもしれないのよ………もうちょっと……

 ああん、触れそうで触れられないこのもどかしさ。

 あとほんの僅かな距離が私の欲望を阻止してくる。


 はぁはぁ、どうしても届かないわ。

 諦めるしか…… 


 その時だった。

 アイリが私の胸に顔を埋めてしまった。

 それはそれで嬉しい。

 しかし……チャンスは失われてしまった。


 お姉ちゃん、一生に一度のチャンスを活かせなかったわ。

 はぁ、少し落ち着こう。


 そうだ、せっかくこんなに間近にアイリがいるんだもの。

 久々に鑑定してみようかしら。



ー慈愛の魂ー

 万人を慈しむ慈愛の持ち主。

 慈愛の精神で万人の心を掴むカリスマを待つ。


 聖人 歌姫アイドル 詩人、等の聖職者、芸術家、文化人に向く。

 スキル〝心の癒やし〟〝昂揚の励まし〟〝恋心のときめき〟〝幸福の実感〟〝心躍る童心〟〝悲哀の涙〟〝震える感動〟を持つ。


ースキル・心の癒し LV4ー

 視線、仕草、声で効果範囲内にいる者の心を癒やす。

 極まれば効果範囲と、効果が高くなる。


ー昂揚の励まし LV5ー

 応援することで対象者の心を高揚させ、

 やる気を出させる。

 歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。

 極まれば効果範囲と、効果が高くなる。


ー恋心のときめき LV2ー

 恋歌で聴衆の恋心と、ときめきを増幅させる。

 ただし、スキルは自身の恋心で成長する。

 つまり自身の恋心が少ないと効果は薄い。


ー幸福の実感 LV3ー

 声を通じて対象者に幸福感を与える事が出来る。

 歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。

 極まれば効果範囲と、効果が高くなる。

 ただし、スキル使用者が幸福感を感じていないと効果を発揮しない。


ー心躍る童心 LV2ー

 動作、声で効果範囲内にいる者の心をウキウキさせる。

 極まれば効果範囲と、効果が高くなる。


ー悲哀の涙 LV3ー

 声を通じて対象者に悲しみを与える事が出来る。

 歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。

 極まれば効果範囲と、効果が高くなる。

 ただし、スキル使用者が悲哀を知っていないと効果を発揮しない。


ー震える感動 LV2ー

 会話や行動でそれを聞く者、見る者に感動を与える事が出来る。

 極まると感動が大きくなる。

 ただし、このスキルのみ他の5つのスキルのLVに応じて上がる。


 スキルは増えてないけどLVがそれぞれ上がっているわ。

 順調ね。

 『悲哀の涙』のLV2が上がったのが気になるかな。

 お姉ちゃんアイリに悲しい思いをさせてしまったかしら。

 ごめんねアイリ。

 あと、『恋心のときめき』のLV2はもう少し高くてもいいような気もすけど、第2王子とはまだお友達感覚なのかも。

『震える感動』もLV2になったわ。

 他のスキルの最低LVが2だからLV2になったのかしらね。

   

 私はこれからの事を考える。

 アイリは3泊する。

 これは、お姉ちゃん3日間一睡も出来そうにないわね。

 久しぶりのアイリの寝顔を毎晩堪能出来るんですもの。

 お姉ちゃん、アイリの寝顔を見守り続けるわね。

 喜んで限界にチャレンジするわ。


 ぐふ、ぐふふ。



ーーーーーーーーーーーーーー



 今年の学園祭も無事終わった。

 今年も一般人の観覧が許され無かった。

 私は兄様ルートを最大限に利用した結果、招待されてアイリ達のコンサートを楽しむ事が出来た。

 今年も雨が降りそうだったけど、お姉ちゃんの力で雨は降らせなかったわ。

 それに私のクッキー効果でアイリは元気溌剌みたいで安心。

 

 私はアイリを裏から愛でる事と兄様の仕事の手伝いですっかり忘れていたけど、そういえば一向に婚約の話が進まない。

 どうしたのかしら?

 それにあの日以降トレーニ様の姿を見かけない。


 私がトレーニ様の申し出を受けて直ぐの頃。

 浮かれたトレーニ様が私と婚約すると同僚に口を滑らせた為、その話が拡散してしまったと兄様が苦々しく言っていた。

 通常は王家の承認が出るまでは秘密にしておくべき話だから兄様が私の為に怒るにも無理はない。

 実際はまだ婚約していないけど、噂ではもう私はトレーニ様の婚約者と言うことになってるみたい。

 おかげで兄様への面会が急に無くなりホッとしているから私としては逆に感謝している。



ーーーーーーーーーーーーーー


 学園祭が終わり、冬が近づいてきたある日。

 私はアイリの為に特製クッキーを作っていた。

 兄様様のクッキーより10倍手間を掛けている。

 ちなみに兄様用クッキーはアイリ用の余った材料で作るけどナイショである。

 オーブンに入れたクッキーがもう少しで焼き上がる頃、兄様が調理場に飛び込んできた。


「兄様、クッキーでしたらもう少しかかります」


 口調は面倒になり、また今まで通りに戻してしまった。

 兄様は見るからに何かに怒っていたけど、私の顔を見て冷静になった。

 何か言い難そうにしている。


「兄様どうされました?」


「リリー、終わったら僕の部屋まで来てくれ。話があるんだ」


 私の質問に、兄様はなんとか絞り出すような声でそう言った。


「では後でお伺いしますね」

 

 なにか良くない話のようね。

 私は兄様の言葉に甘えてクッキーを焼き上げてから兄様の部屋に向かった。

 焼き上がった兄様用クッキーとハーブティーを持っていく。


 クッキーを食べ、ハーブティーを飲んだ兄様はだいぶ落ち着きを取り戻した。

 リラックス効果が高いハーブティーを淹れたのだけど、効果は覿面だわね。

 兄様は大きなため息をついて、そして話を始めた。 


「僕も今日ルーミラから知らされたんだが、昨日リッシルト公爵主催の舞踏会があり、そこでトレーニと隣国の侯爵令嬢との婚約が発表されたらしい」


 私を思いやる兄様の鎮痛な言葉。


「あら、そうなんですね」


 私は思わずそうのんきな返事をしていた。



===============


 天使達の会話ミニ


「リリーの妹偏愛が悪化してない?」


「そっスねえ。間違いなく悪化してるっスね」


「なんか妹が大事すぎて、自身の婚約がどうでも良くなってる感じですよね」


「さすがにトレーニくんが哀れねー」


「でもリリーを裏切ったんでしょ?」


「ま、いろいろあるんスよ」


「いいんじゃない?もともとリリーはトレーニくんに恋してないんだから」


「というか、リリーは誰にも恋して無いでしょ」


「どっスかねー、ま、我々は見てればいいんスよ」


「そうですねー」、「そうねー」


 定位置にデベーと寝転がっている3天使達は今日もまったりしているのであった。

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