第8話 ゲームも電源を切るまでがゲームの時間


予想以上に時間を食った。まさかルールを試合前から破ってしまうことになるとは思ってもいなかった。しかも、ルールを唯一知っている相方2人が破るとは、、、


事を済ませ図書室へ歩いた。誰もまだ来ていないと思っていてもゲームが始まると考えると階段から大股で片手で数えるほどの歩数だが少し遠く感じる。そしてマストが4人の先頭でドアノブをひねる。


『またお前たちは遅刻か。』


そこには痺れを切らした様子のヴァルを始め他7名がこの図書室にそろっていた。


「え?早すぎねぇ??まだ始まって30分程度だぞ?」


針は階段での騒ぎがあろうとのろのろと進みまだマストがこの世界に来て5分程度しか進んでいない。


『その事だが、今回から少し使用が変更されたんだ。。。シル、伝えてないのか??』


『あ、忘れてた。』


すっとぼけた顔でモモキがつぶやく。


「『あ、忘れてた。』じゃねぇーよ!そーゆーことは先に言ってもらわないと困るんだよ!」


『全く…大事な事くらいしっかり説明しておけよ。そんな調子じゃルールも破りそうだなぁ』


『だ、だ、だ、だい大丈夫だ、、、な?サグ!?』


『お、お、おう。』


ヴァルの率直な感想に焦る2人。


『シル~、なんでサグが関係あ…』


勘の鋭いキルトがそう聞こうとした瞬間、サグの大きな手でキルトの顔をガシッと持ち宙ぶらりんにした。


『おっと〜手が滑ったぁー。』


『真っ暗だぁ〜、、はははぁー』


『何をやってるんだ??貴様らは…』


『あーコイツが進行の邪魔してたもんだから"先輩"として指導してたところだ、構わず進めてくれ。』



とんだ茶番劇のおかげでなかなか本題にたどり着けない。プレイヤーは早く本題に入れと言わんばかりの表情だ。

しかし、"先輩"というワードがマストには見逃すことができなかった。


ーなぁモモキ、ここでも強い意志で会話は出来るのか??もしできているなら返事をしてくれ


こんなスキルがあったらいいなといったマストの淡い期待のもとしてみたが。。。


➖はいはい、聞こえてる〜。マストにはほんと驚かせることが多いな。


ーお、すげー、ここでのモモキの妄想会話のカギカッコ的役割はこの➖なのか。


聞きたいことがあるにもかかわらず、メタ発言をしてしまう。しかし、私には有り難い。


➖なんのことを言ってるんだ?まぁいい、だがマストはおかしな奴だな。


ーそ、そうか??


『まぁ本題に入る。みんな説明を受けたと思うが…』


無駄なやり取りをしている間にヴァルが本題に入る。


➖マスト、今は説明を聞いた方がいい。


ーあ、ちょっと待って、まだ聞きたいことが。。。


返事がない、というよりはモモキの表情を見るからに反応がない。おそらく向こうは通信を断つことができるのだろう。そう察したマストは仕方なくヴァルの説明を受けることにした。


『今からゲームをしてもらう。期間はこの時間から学年末テストの最終時間まで。最後に得点が一番高かったものが願いを1つ叶えることができる。その他の細かな点は各自バディから聞くように。質問はないな?』


ここにいるメンバー全員の目つきが変わる。そして軽く頷く。


『では今から、battle of delusion を開催する!!』


そうヴァルが始まりを告げるとマストの体は青白く光った。マストと同じく、他全員が光っていた。


「なんだこれは…」


マストだけではなく他のプレイヤーも同様に慌て出す。そして光は強くなり今にも消えてしまいそうだった。その時、、、


『妄想に限りなし!!』


《〇〇の加護があらんことを》みたいなものなのだろうか。ヴァルのその一声に合わせてヴァル、シル、サグ、キルト、ルル、サヤの6人は右手をじゃんけんのチョキに似た中指と人差し指をクロスさせ、腰のあたりに地面と水平になるように当てた。

どうやらこの世界の敬礼のようなものらしい。マストたちはそれを見るなり慌てているのを忘れてしまっていた。

そしてどんどんと存在が薄らいでいく。


ーこの感覚前にも一度…


そして図書室には1人の姿も見えない静かな場所となった。




ーなんだここは…


やけに涼しい、いや冷たいのか。

マストの目の前には薄ぼんやりとした月明かりが見える。その明かりは非常に不確かで鼓動に合わせて右へ左へそして膨らみ縮み、月明かりであることもうたがえるほどだ。そして重力を感じられないふわふわと浮いた感覚だ。少し考えないと分からなかった。ここは水の中だ。

そう考えた途端息苦しくなりモモキを探す。


ーどこだモモキ!返事をしろ!!


返答がない。焦るマストは周りを見渡してみた。そこには…


『…スト、起きろ。マスト!起きろってば!』


夢から起きるような感覚だった。モモキに軽くビンタされ目を覚ました。しかし痛くはない。


『妄想の中でも寝れるっておかしいな、マストは』


「こ、ここは?」


『西校舎2階物化講義室だ。』

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ようこそ妄想の時間へ〜welcome to the time of delusion 〜 Lalapai @Lalapai

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