第143話【赤鬼神社】
「立派な神社ですね」
目的地である赤鬼神社に着いたところで沙耶が本殿を見上げながら呟く。
名前の由来?
そんなもん知らん!
どうせ大昔に何か災害があったとかしたときに赤鬼が現れて助けてくれたとかじゃないのか?
まあ、呼び方は《あかおに》じゃなくて《あかぎ》だけどな。
「だろ?
結構古くからある神社だし結構な大きさがあるから風格というか味がある。
それに五年前に修復工事をしてるからボロい感じもなしないと凄くいい状態なんだ」
父さんは沙耶の反応が嬉しかったのか上機嫌である。
この人、昔からさらさら実家を手伝うつもりはなかったくせにこの神社には凄い愛着と誇りを持っているらしい。
さっき父さんが言っていた五年前におこなった修復工事の時も結構なお金を出したり手伝いに来たりしてたしな。
「ほら、自慢してないでさっさと行くよ」
「すまない。
すぐ行く」
父さんのドヤ顔に少しイラッときたっぽいカエデが早くするように急かす。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
「みんな、来たよー!」
「お、お邪魔します」
それぞれが挨拶をして神社の裏側にある家の中に入る。
誰がどの挨拶をしたかは何となくでわかるだろう。
これは俺だけかもしれないが実家に行った時って〝お邪魔します〟か〝ただいま〟のどっちの方がいいのかって迷う。
「来たか。
みんな上がりなさい」
そう言ってリビングから出てきたのは父さんの兄であり俺の叔父さんにあたる佐藤一晃さんだ。
「兄貴。
久しぶり」
「おう。
あ、君が噂の松本沙耶さんかな?」
「初めまして。
快人くんの彼女の松本沙耶です。
よろしくお願いします」
沙耶は父さんに挨拶をした時とは違い今度は落ち着いて挨拶をしている。
「うんうん。
聞いていた通り良い子そうで良かったよ。
あ、うちの娘達が君のファンらしいんだ。
よかったら構ってあげて欲しい」
「はい、わかりました」
「みんないらっしゃい」
「よう来たね」
リビングに入ると祖父、祖母、叔母さんが挨拶をしてくれる。
「「あ!
本当に沙耶ちゃんがいる!」」
そう言って何故か正座をして待っていた従姉妹の結と憂が沙耶に駆け寄り周りをグルグル回ったり握手してもらったりしている。
その行動から余っ程楽しみにしていたのだろうと想像ができる。
ちなみに言うとこの子達双子です。
「あはははっ。
ありがとう」
沙耶は少し困りながらもしっかりと相手してあげている。
従姉妹よ、憧れの人に会えて嬉しいのはわかるが俺達にも挨拶ぐらいしたらどうだ?
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