第137話【慣れ】

「で!で!

沙耶さんどうだった!」


カエデが身を乗り出して沙耶に聞く。

食事中に行儀が悪いぞ。


「こらカエデ、急かしすぎよ。

それに行儀が悪い」


「面目ない」


カエデがてへっと可愛らしく舌を出し謝る。


「ごほん!

まず確認から。

あなた達、ちゃんと最後までしたのよね?

前戯だけして終わったとかラブホまで行って抱き合って寝ただけとかじゃないわよね?」


母さんが〇ヴァンゲリ〇ンの主人公のお父さんのように机に肘を置き手を握り鋭い目で見てくる。


「はい」


「最後までしました」


俺と沙耶は縮こまりながら答える。

何故か怒られている感覚になってしまう。


「よかった!

ここまでしたのにもしヤッってないとか言い出したら殴ってやろうと思ってたから」


「だよね〜。

これからお兄ちゃんをチキンて呼ばなければいけなくならなくてよかったよ」


「親子揃って俺に厳しくないか?」


「当たり前よ」


まあ、あれだけお膳立てされてたのだから仕方ないか。


「ねえねえ、沙耶さん」


「やっぱり、痛かった?」


「おい、カエデ。

みんないるのにそんなこと聞くなよ」


「いいじゃん。

私まだ処女だし不安なんだもん。

もしかして、お兄ちゃんが私の初めて奪ってくれるの?」


「おいおい。

冗談はよせ」


「ぶーぶー。

私は結構本気なのにー」


「いくらカエデちゃんでもそれはダメよ。

それで質問の答えだけど、初めは結構痛いよ」


「やっぱりそうなんだ。

ちょっと怖いな。

沙耶さんは大丈夫だった?」


「大丈夫だったよ。

快人くんが優しくしてくれたから最初は痛かったけど途中から良くなってきたし。

でも、まだ何か入っている感覚が残ってるけど」


沙耶は顔から火がでそうなほど赤くなってお腹をさする。


「最初は仕方ないわ。

そのうち慣れるわよ」


「そうそう、慣れよ慣れ」


「「ニヨニヨ」」


そんな沙耶を見た母達はニヤけがをで俺を見てくる。


俺はその二人を無視して食事を進める。

気まずい、気まずいぞ!

俺は何を言えばいいんだよ!


「あんた達もこれでやっと本当のカップルって感じよね。

もうデキ婚でもいいからどんどんやっちゃいなさい」


「母親の言うことじゃねーな。

子供は俺がちゃんと就職してある程度安定してからじゃないと作る気は無いよ。

沙耶と生まれてくる赤ちゃんにあまり苦労をかけたくないしな」


「就職のことは気にしなくていいのよ?

私がどうとでもしてあげるし」


「どうとでもできるのかよ」


「なるわよ。

私をなめないでね。

でもあんたの言いたいこともわかるから大人しく待つとするわ」


「そうしてくれ」

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