第106話【クマのぬいぐるみ】

「で、何で今まで黙ってたんだ?」


「痛い!

痛いよ〜」


俺は、沙耶の鼻を軽くつまみながら聞く。


「お義母さんとカエデちゃんが快人くんに言ったら絶対に反対するから当日まで秘密にするって」


沙耶は、俺が鼻を離した少し赤くなった鼻を擦りながら言う。


「そりゃ、反対するだろ。

俺がどんな目にあうか火を見るより明らかだろ」


「え〜、いいじゃん。

私は嬉しいよ?

皆に祝ってもらえて。

快人くんは嬉しくないの?」


沙耶が少し寂しそうな顔で俺に聞いてくる。


「はぁ〜。

どうせもう準備を万全なんだろ?

もう大人しく祝われるよ。

沙耶と付き合ったことを祝われるの自体は俺も嬉しいからな」


「ほんと!

やったー!」


「ニマニマ。

快人も随分と松本さんに甘くなりましたな〜」


ジンが俺達のそんな会話を聞いてニマニマした笑顔で俺をからかってくる。

てか、ニマニマって口で言うものじゃないだろ。


「別にいいだろ。

今の話しでわかったと思うが今回のパーティーのことは俺は何も知らないから、カエデか沙耶に聞いてくれ。

俺もカエデにいろいろ聞かねばならん」


さすがに誰が来るのか、何時からするのか、俺がすることはないかぐらいは聞かないとな。


「はいよー」


「ってことで沙耶、今日の昼飯はカエデも一緒な」


「あいあい」


そう言って俺は携帯を取り出しメッセージを打っていく。



四限の授業が終わり次第弁当を持って早急に俺の教室に来い。


俺が今の今まで知らなかった今日のパーティーについて貴様にいろいろ聞かなければならない。


もし、来なければ貴様が寝る時に抱き枕にしている大切なクマのぬいぐるみの中身が無くなると思え。



「と、こんなもんでいいかな。

よし、送信と」


ピロン!


俺が送ってからものの三十秒でカエデからメッセージが帰ってきた。



申し訳ございませんでした!


四限の授業が終わり次第早急に向かいますのでどうか、どうか、くー君には手を出さないで下さい!



「早いな。

てか、なんだよ俺が悪者みたいに書きやがって」


くー君とは、俺がカエデに送ったメッセージに書いたカエデが抱き枕にしているクマのぬいぐるみだ。


クマのぬいぐるみで、名前がくー君って安直過ぎやしないか?と思ったがカエデが異常に気に入っていたので何も言わなかった。


ついでに言うとくー君はカエデの誕生日に俺がプレゼントしたものでもある。


あー、めっちゃ高かったな〜。

思わず値札を三回ぐらい見てしまったよ。

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