第96話【事情聴取】

「快人くん!」


沙耶の心配する声が聞こえる。


「うぉぉ!」


包丁を持って突っ込んできた田中の手を取り、足をかけ、綺麗な一本背負いをきめる。


「ぐぁっ!」


勢いよく地面に叩きつけられた田中は気を失った。

見たところ頭を打った感じではないので大怪我には繋がらないだろうと思う。


「おい!

大丈夫か!」


遅れて、学校の先生が駆けつける。


「先生、警察と救急車お願いします。

あとロープでこの人を縛っておいてください」


「ああ、わかった。

誰かロープ持ってきてくれ」


教師陣がそれぞれ動き出す。


「快人くん、大丈夫!?

怪我とかない!?」


沙耶が慌てて俺に近寄ってきた。


「ああ、大丈夫だよ。

このぐらいなんてことは無いよ」


「快人って柔道でもやってたの?

綺麗な一本背負いだったけど」


奈緒が興味津々って顔で聞いてくる。


「俺の父さんって海外を色々回ってるだろ?

俺も子供の頃ついて行ったことがあるんだが、海外って危ないことが多いから自分の身は自分で守れるようにするために空手や柔道、合気道なんかやってたんだよ」


「へぇー、色々やってたんだ」


「これでも結構強かったんだぞ?

今はもう本当に護身術程度だけど」


「それで十分だと思うよ」


そんな話しをしていると警察が来て、事情を聞くために俺達は警察署へと連れていかれた。


◇◆◇◆


「うん、事情は全てわかったよ。

今、親御さんに連絡を取っているから親御さんが迎えに来たら一緒に帰ってくれてかまわないよ」


「はい」


俺達は、事情聴取を受け終わり、待合室的なところで親の迎えを待っていた。


「快人、迎えに来たわよ」


「沙耶、無事よね?」


一番最初に母さんと美陽さんが一緒に来た。


「みんなも、この子達のせいで危険な目に合わせてごめんなさいね。

昨日も一緒に帰ってくれたみたいで、ありがとう」


「いえ、いいんですよ。

友達として当たり前のことですから」


ジンの言葉に合わせてみんなが頷く。


「母さんどうする?

すぐ帰る?」


「いいえ、皆さんの親御さんとも話がしたいから待ちましょう」


「わかった」


それから間もなくして、みんなの親御さんが迎えに来た。


「皆さんのお子様を危険な目に合わせてしまい申し訳ありません」


母さんがそう言ってみんなの親御さんに頭を下げるのに合わせて、俺、沙耶、美陽さんも頭を下げる。


「頭を上げてください。

自分の子供が友達のために行動できる人間であると知れただけでとても嬉しいんですよ」


「そうですよ。

これで、友達を見捨ててたらしばき倒していたかもしれません」


それから何故か親同士の世間話しに変わり、警察の方がそろそろお帰りくださいと言ってくるまで話し込んでいた。

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