第86話【覚悟しておけ】

「き、貴様!」


お、怒ってる怒ってる。

額に血管が浮かんできしそろそろキレるかな?

俺はもうとっくにキレてるけどね。


「なんだよ?

言いたいことがあるなら言ってろよ」


俺も結構頭にきているので煽ってきしまった。


「沙耶はな!

俺が目をつけて今まで育ててきたんだよ!

沙耶さえ入れば俺の出世の道も近いんだ!

それがなぜお前みたいなやつに取られなければいけないんだ!

返せ!俺の沙耶を返せ!」


三十歳ぐらいのオッサンが高校生に向かって怒鳴るなよ、大人気ないな。


「それがお前の本音だよ。

さっきから沙耶のためだ何だと言ってたが結局は自分のためなんだよ。

悪いが俺はそんな自己中心的なやつの話しを聞くことは出来ないよ」


「あ、快人くん!」


俺が話し終わったのとほぼ同時に撮影が終わったのかスタジオから沙耶が出てくる。


「覚悟しておけ」


沙耶の存在に気づいた田中は俺にそう言い残してどっかに行ってしまった。


「沙耶、撮影はもう終わったのか?」


「うん、終わったよ。

もう帰っていいって。

快人くん、田中さんと何話してたの?

田中さん怖い顔してたけど」


「それはこの後沙耶の家に行った時に話すよ。

それよりも早く支度して帰ろう」


「うん、わかったよ。

快人くんもなんか機嫌悪い?」


おっと、沙耶にはいつも通り接しようと思っていたが機嫌の悪さが少し出てしまっていたらしい。


「まあ、ちょっとな。

悪い、沙耶が悪いわけじゃないのに態度がきつくなってたか?」


「大丈夫だよ。

ちょっとそんな気がしただけだから。

じゃあ、さっさと帰ろうか」


それから沙耶の家に着くまで沙耶は笑顔でいろいろ面白い話しをしてくれた。

俺に気を使ってのことだろう。

そのおかげが少し強ばっていた表情もいつも通りに戻ってきた。

本当に沙耶はいい子だと思う。


「ただいま〜」


「お邪魔します」


「おかえり」


松本家に着くと美陽さんが出迎えてくれる。


「沙耶、美陽さんそこに座ってください」


「え?

私も?」


美陽さんが自分も呼ばれたことに戸惑っている。


「はい、美陽さんもです。

少し聞いて欲しい話しがあるんです」


「どうしたの?」


「あの撮影スタジオの外で田中と話してたことだよ」


「あー、あれね。

わかった」


「何かよくわからないけど、とりあえず座って話しを聞けばいいのね?」


「はい、お願いします」


それから俺は沙耶と美陽さんに沙耶の撮影中に田中と話したことを話した。

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