第72話【報告】

それからは特に何事もなく夕食を食べ沙耶を家まで送り、家に帰った。

家に着いた頃には二十二時前ぐらいになっていた。


「ただいまー」


「おかえり」


「おかえりー」


リビングに入ると母さんとカエデがくつろいでいた。


「ちょっとここ座りなさい」


「なんだよ」


俺は母さんに言われるがままソファーに座った。


「で、どうだったの!?

告白した!?

キスした!?

もしかしてホテルまで行った!?」


母さんが凄い顔で迫ってくる。


「いや、何もしてないよ。

それに最後はなんだ?

もし告白してOKを貰ったとしてもその日にホテルには行かないだろ、知らんけど」


「ヘタレね。

そのぐらいグイグイ行きなさいってことよ」


「お兄ちゃん、ご飯奢ったりとか何かプレゼントしたとかないの?」


その辺で転がっていたカエデも質問してくる。


「そうよね。

そのぐらいはしたんでしょ?」


母さんは何でさっきから怒ってんだよ。


「二千円ぐらいするシュシュをプレゼントしたよ。

ご飯に関しては奢ろうとしたら怒られた」


「おーシュシュとはまたオシャレな物を。

怒られたってなんで?」


「お金だけの関係にならないようにこういうところもしっかりとしないとダメなんだよ!だって」


「おー、愛されてるねぇーこのこのー」


「しっかりしてるし、もう最高ね。

早く結婚して私の娘になってくれないかしら」


「母よまだ付き合ってもないに結婚って」


「じゃあ、うだうだ言ってないでさっさと付き合いなさい!」


だから何で俺が怒られてんだよ。


「はいはい、そうだねー」


もう自分の部屋に戻ろうと立ち上がる。


「あ、お兄ちゃん最後に質問!」


ゴロゴロと転がっていたカエデが身体を起こし俺に言う。


「何だよ」


「今日一日、沙耶さんと一緒にいて楽しかった?」


何でそんな質問を?

まぁ、別に秘密にしたり誤魔化したりする質用も無いし普通に答えるか。


「ああ、楽しかったよ」


「そう、じゃあ良かった」


カエデはニッコリと俺に笑いかけてまたゴロゴロ仕出した。


「カエデ、改めて今日は朝からありがとうな。

本当に感謝してる」


「いいってことよー。

でも、アイスぐらい買ってきてよ」


まあ、アイスぐらいならまた買ってきてやろう。


「あと、母さん、服代とかいつ返せばいい?」


「ん?

あー、そんなのいいわよ。

私が出したくて出したわけだし。

あ、でも腕時計はちゃんとお父さんの部屋に戻しておいてね」


「わかった。

ありがとう」


「どういたしまして」


俺は今度こそ自分の部屋に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る