第64話【あと二時間】

沙耶とのデート当日


「お兄ちゃん!

起きて!」


「んん〜ん」


俺はカエデに起こされて目を開ける。


「お、カエデ。

今何時だ?」


確か昨日は八時に目覚ましをセットしたはずなのにまだなっていないよな?と思いカエデに時間を確認する。

ちなみに沙耶とのデートは十二時からなので八時から起きて散髪行っても十分に間に合う。


「六時だよ!

はやく起きて出かける準備して!」


こいつ俺の目覚ましの二時間前に起こしに来やがった。


「あと二時間」


俺はあと五分みたいな言い方で言ってまた布団にくるまる。


ガバッ!


「ふざけてないでさっさと起きろー!」


カエデが俺から布団を取り上げ耳元で大声で叫ぶ。


「うわ!」


あまりの大声にベッドから飛び起きてしまった。


「お兄ちゃん、いい加減本当に怒るよ。

誰のためにしてあげてると思ってんの?

私だって本当は今日予定ないから昼まで寝てられたんだよ。

なのにお兄ちゃんのためにこんな朝早くから起きて、お兄ちゃんのためにいろいろ考えて今日の予定決めたりしてるんだよ。

沙耶さんだって楽しみにしてるって言ってたのに妥協なんて許されないんじゃないの?」


そうだよな。

カエデが俺のためにここまでしてくれているのに俺がこんなんじゃ駄目だよな。


「カエデ、ごめん俺が悪かった。

今日はよろしく頼む」


俺はベッドからでてカエデに謝る。


「仕方ないなぁ〜。

四十秒で支度しな!」


ラ〇ュタか!

まあ、いいかさっさと支度しよ。


出来るだけ早急に支度をして家を出る。

時間は七時ぐらいだ。


「じゃあ、まず服買いに行こうか」


「え?

服も買いに行くの?」


散髪のことは聞いていたが服のことは何も聞いていない。


「散髪のことしか聞いてなかったからあんまりお金持ってきてないぞ?

買えなくはないが、沙耶とのデートに支障が出るかもしれんし」


俺は散髪代と沙耶とのデートのために財布に二万円入れてきている。

カエデがどのぐらいのを選ぶのかにもよるがカエデの場合服だけで二万近くまで使う可能性がないとは言いきれない。


「そこは大丈夫。

散髪代と服代はお母さんからもらってるから。

その予算ギリギリまで使ってお兄ちゃんを出来るだけカッコよくするからね!」


「まじか」


何で俺より母さんのほうがやる気なんだよ。


「じゃあ、この店は入るよ」


「まじここなの?」


いや、えー!

結構高そうなとこだよ!


「大丈夫、大丈夫」


「お前、母さんから何円貰ってきたんだ?」


「五万円だよ。

さ、早く行くよ」


「お、おい!」


そう言ってカエデは俺の手を掴んで店に入る。


え?

五万?

まじ母さん何考えてんの?

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