第34話【移動の間】
「実の母親に向かって馬鹿とは何よー」
「どこに、友達の母親の化粧の邪魔をして、生着替えを覗きに行く実の母親がいるんだよ!」
「え?
ここにいるよ?」
母さんは自分を指さしそう言った。
「もう手遅れか」
俺は頭を抱えながらそう言った。
「まぁ、いいじゃない。
早く行きましょう!」
いや、良くねえよ。
お願いだから気にしてくれよ。
そんなことを考えている俺をよそに皆が外に出て行ったので、俺も遅れて出て行き、俺達は母さんの車に乗り込んだ。
席順は、助手席にカエデが座り、後ろに美陽さん、俺、沙耶という意味のわからないことになっていた。
「なぁ、何で俺が真ん中なんだ?
何か緊張するんだけど」
「そりゃ、緊張する快人くんが見たいからに決まってるじゃない」
そう美陽さんが言う。
確信犯か!
「いいじゃない。
美人親子に挟まれているのよ?
嬉しいでしょ?」
美陽さんは、いたずら笑顔でそう言った。
「はいはい、そうですね」
実際は凄く嬉しいがそんなことを言う訳にはいかないので適当に答えることにした。
「うわぁー。
つまんないー」
何だこの人まるで子供だな。
まあ、ほっとくか。
「そう言えば母さん、どこ行くの?」
昼飯を食べに行くということは聞いていたが何処に何を食べに行くのかは何も聞いていなかった。
「着いてからのお楽しみよ。
まあ、母さんにドーンと任せなさい!」
母さんがそこまで自信ありげに言ってるんだから変なところに連れていかれたりはしないだろう。
「ねぇねぇ、快人くん」
美陽さんが可愛らしく尋ねてくる。
「何ですか?」
「昨日、あの子を佐藤家に泊めてもらったけど何かなかったの?」
「何かとは?」
「襲ったり襲われたり?」
この人は何を言っているんだ!?
何故俺の周りには、平然とそんなことを聞いてくる人ばかりなんだ!
「そんなことありませんよ!」
「でも昨日、お兄ちゃんと沙耶さん一緒に寝たみたいですよ」
カエデがまた余計なことを言い出す。
「え!
本当!
沙耶!
何でそこまでして襲わないの!
既成事実を作ってしまえば勝ったも同然なのに!」
「だって、快人くんにギュッと抱きつかれていて動けなかったんだもん!」
沙耶がとても悔しそうに言う。
「そう、それは仕方ないわね。
でも、抱き枕がわりにされたってことは次は行けるわよ!
怯まずにいくのよ!」
「うん!
任せてよお母さん!」
なんて会話を本人の前でしてんだよ。
何かいつか本当に襲われそうで怖くなってきたよ。
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