第26話【偶然】

「そんな偶然あるもんなんだねー」


母さんが凄く驚いた表情のまま言う。


「世の中って意外に狭いもんだね!」


何故かカエデはウキウキしている。


「母がいろいろお世話になったようでありがとうございます。

お義母さんのことは母からいっぱい聞かされています」


「え?

まっちゃん私のことをなんて言ってるの?」


それは俺も気になる。


「えーと、「私にはめっちゃカッコイイ先輩がいるんだよ!女の人なんだけどね、私が困っていると、何か困ったことがあったらいつでも頼ってねって言ってくれてね!

他の人ならウチが母子家庭だって言うと同情の目で見られたり気を使われてちょっと嫌な気持ちになったりするんだけど、その人はそんなことは絶対にしないのに私が相談したらちゃんと相談にのってくれるんだよ!

私もあんな人になりたかった!」

って言ってました」


美陽さんのモノマネなのか松本さんが声色を変えて言う。


「あっはは!

似てる似てる!

まっちゃんそんな声だ!

でもまっちゃん恥ずかしいこと言ってるね」


美陽さんの声を聞いたことがない俺にはわからないが結構似ているらしい。


これが本当なら美陽さんはとてもテンションが高い人らしい。


「私の収入が増えたのもお義母さんが母にしっかりと仕事を教えてくれて、重要で上の評価が上がりやすい仕事を回してくれてるからだと聞いています」


母さんがアチャーって顔をする。


「あちゃーバレてたか!

でも、私が気を使って回してるだけじゃないのよ。

重要な仕事をそんなことだけで回したりしない。

ちゃんとまっちゃんならやってくれるという信用とこれまでの仕事の出来で決めてるからね」


「はい、母もそれはわかっているそうで、自分を信用してくれて嬉しいって言ってました」


「何か恥ずかしいわね」


母さんが照れている。


「母さん見直したよ」


「お母さんやるじゃん」


だからなんでカエデは上からなんだよ。


「ふふっん!」


母さんがドヤ顔をしている。


「そう言えば、まっちゃんも沙耶ちゃんのこと言ってたわよ」


「え?

どんなことですか?」


「「私にはめっちゃ可愛い娘がいるんです!

私はあの子がいるから頑張れるんです!

部長もあの子を見たら絶対に気に入ると思うんです!

今度紹介しますね!」って言ってたよ」


母さんが笑いながら言った。


「恥ずかしいです」


松本さんは恥ずかしさのあまり顔を赤くして俯いてしまった。

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