Act.1-3
「はぁ~」
美亜は盛大な溜め息をつき、腰を降ろす。
「あ~あ。とうとう呼び出されちゃったね」
前の席に座る茜は可笑しそうに振り返ると、少し意地悪げな表情で美亜の顔を覗き込んだ。
「笑い事じゃないよお。先生の説教は長いらしいし……ハァ」
そう机にうなだれるように突っ伏すと、上から茜の呆れたような声が降って来た。
「自業自得でしょ。最近、毎日遅刻してんじゃん。今日は何? ゲーム? 漫画?」
「……ゲーム」
「ぷっ。また徹夜してたんだ?」
「そう! 今回のは、丸二日で全クリしましたっ!」
茜の言葉に反応しムクリと身体を起こすと、美亜は嬉しそうに満面の笑みを浮かべながらピースサインを出す。
そこへ、隣の席の少年が二人の会話の間に割って入って来た。
「何? お前この間買ったヤツ、もうクリアしたのか?」
そう言って身を乗り出すように話し掛けてきたのは、美亜の幼なじみ・
駿は目を丸くし、驚いたように美亜を見つめている。
「そう! ま、あたしにかかればこんなもんよ♪」
「すげぇな。俺と二日前に買いに行ったばっかりだってのに……帰って以降ずっとやってたのか。ったく、そんな事ばっかりしてるから遅刻の常習犯になるんだよ」
駿が呆れたように言うと、美亜は頬をぷくっと膨らませて反論した。
「なら駿が起こしに来てくれればいいじゃん。お隣りなんだし!」
「なっ、バカッ! 女の部屋なんかに行けるかよっ! しかも寝てる所になんて……」
「何で? 昔はよく一緒に寝てたじゃん。何を今更……」
「ガ、ガキの頃の話だろ? 今、そんな簡単に出来るかよっ」
「変な駿……」
頬を赤らめ慌てふためく駿と、全く意味が分かっていない鈍感な美亜を見た茜は、やれやれと呆れたように溜め息をつき、心の中で呟いた。
(この分じゃあ、駿が報われる日は遠いな……)
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