第13話 キャンドウ


「すごいなあ、パテントで訴えられないのかな」

確かにブロックの質は格段にナノブロックの方が良いが、百円にしては本当に良くできている。

カワセミの前で、私は満足だったが、不安もあった。


「このシリーズ、買い占めようかな・・・製造中止になる前に」


私にとってキャンドウは、同僚が言うように秘密の宝が眠っている所だ。


実はキャンドウで別の商品を「買占め」をしたことがある。


「これ何? おもちゃだろうけれど・・・」


大きさとしては小さめのUSBくらいで、周りにゴムが付いていて、左右には六本対の足のようなものが出ている。格好が良い、足の少ないムカデの様だ。

その日はそれを買わずに帰って、パソコンで調べた。


「ヘックスバグ・・・へえ・・・・」


海外生まれの虫のおもちゃだ。振動しながら進んでいくが、それがまっすぐという訳ではない。本などで迷路を作って遊んでも良いようだ。


「ああ、日本じゃ受け入れられないだろうな・・・・・」


ゴキブリが珍しい海外では面白いかもしれないが、日本で売っては見たものの、結果が悪すぎたのだろう。旧モデルらしく、現在売られているヘックスバグシリーズは、かなり洗練されて、高度なおもちゃになっている。

 もともとの定価の約九割引きでなのでとにかくいくつか買ってみた。本でアバウトな迷路を作り数台を動かしてみると、振動しながらあっち行きこっち行する。


「結構面白いかも・・・」


ぼーっと眺めてしまった。もともとナノブロックも最初はたくさんのパーツの入ったものとして売られていたが、なかなか売れずに、小さなものを設計図付きで売ったら爆発的に売れたという。

「子供の頃の想像力が大人にはない」というよりも

「仕事で疲れているので、遊びで考えたくない」という方が当てはまるとの分析がされている。

私がタティングレースで要領の悪いことをやっていたのと同じことなのだろう。私も含めて多くの日本人が「疲れている」ことは否めない。


「ボタン電池だから、赤ちゃんのいる家には駄目だな」


と親戚と同僚の小学生の息子さんなどにあげたら、案外好評だった。

しかしながらである。百円の、性格には百八円の物をあげたのに、どうしても言う人間はいる。


「賄賂みたいよね」

「気にいられようと思って」

「美人じゃないくせに」


私と同程度の容姿の人間が、女性が言う。その陰口に対する態度は、後輩の女性が言うには


「どうしてそんなに強いんですか? 」


なのだそうだ。


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