第3話

2人...(正確には1人と1体)はマンションの部屋へと入る。リビングに着くと男性は疲れた様にテーブルに顔を伏せる。


「君...本気で僕と暮らすつもりなの?」

「ええ...そうよオダ・シン様」


ギョッと、驚いてオダ・シンと言われた男性がアンドロイドの女性を見た。


「な...なんで名前知っているの?」


「さっき、WBCを借りた時、貴方の経歴を同時に読み込んだの。貴方の現在までの大体のデーターはココに収録したわ」


アンドロイドは、自分の頭を指差して言う。


「貴方は、ごく普通の平凡な男性だわ。学歴もさほど悪くなく平均的な偏差値の方で、大学卒業後に大手のコンピューター会社に就職、だけど...会社の方針に就いて行けず3年程で退職。現在の会社のIT企業に就職した。ちなみに貴方は腰痛持ちの傾向があるようね。私との夜のベッドインには、あまり無理に腰を使わない方がいいわね」


「こ...こら、あまり人の履歴を淡々と言うな!」

シンは赤面しながら言う。


「大丈夫。ココには貴方と私だけですから」

「それにベッドインって?」

「私の身体の設定は、ラブドールが基本設定されているの。だから男性相手にベッドでのプレイが可能なの」

「つまりセックスも出来る事?」

「そうよ」


シンは溜め息を吐く。これまでラブドールと言うのはベッド相手だけの物と思っていた。しかし...自分の前に現れた相手は、凄まじいまでの学習能力を持っていた。出会って僅か1時間弱の間に相手はシンの大部分を知った。かなりの高性能だとシンは知った。


シンは、アンドロイドの身体を見て



「君、シャワーを浴びなよ」

と、声を掛ける。


「シャワー...?」

「ほら、そこのドアの向こうにあるから」


シンは、半透明の扉を指してアンドロイドを浴室に連れて行く。



「シャワー浴びたら出て来てね」


と、言ってシンは浴室から1人出て行く。待っている間に彼は1人パンを食べて軽くコーヒーを飲んだ。15分程が経過して、そろそろ終わったかなと思って浴室をのぞくとアンドロイドは、まだ衣服のまま立っていた。


「何しているの!」

思わず大声で言う。


「どうしたら良いのか分からなくて...」


高性能だと思っていたが、意外な部分で欠陥があるのだな...と気付いた。


「入浴は始めてなんだ?」


アンドロイドは、首を縦に振る。


「じゃあ…服脱がすけど、いいかね?」

「はい。脱がせて下さい」


シンは、少し赤面しながらアンドロイドの服を脱がせる。白い衣服の下には、柔らかそうな白い肌が現れた。女性用の白いショーツを脱がせて改めて身体を見るとアンドロイドの身体は見た目20代前半と思えた。


「椅子に座って」


アンドロイドを椅子に座らせて、スポンジに石鹸液を掛けて、身体を洗わせる。

身体を一回り洗わせると、シャワーで石鹸液を洗い流し、アンドロイドを湯船に浸かせる。

アンドロイドは、じっと...シンを見ていた。それに気付いたシンは


「どうしたんだ?」

と、声を掛ける。


「貴方は、何故、お風呂に入らないの?」

「君が出たら、次に入るよ」

「そう...」


アンドロイドの表情が全く読めなかった。自分はこんなのと付き合う事になるのか...と、シンは内心思った。しばらくしてアンドロイドが湯船から上がる。


「身体は、拭けるのか?」

「始めてなので、お願い」


シンは、少し溜め息混じりに、着替え場に行きアンドロイドの身体を拭かせる。


「前を向いて」


アンドロイドを前に向かせた時、女性らしい美しい姿にドキッとした。膨らみかけの柔らかそうな胸、そして両股の所にある無毛のワレメ。それらを包み込んだ美しい肌。抱き上げたら、さぞ気持ち良いだろうとシンの男心が衝動した。

とりあえず、衝動を抑えながらアンドロイドの身体を拭き終わらせて、彼女をリビングで待つ様に言って、シンは風呂へと入って行く。

シンは、湯船に浸かりながら、アンドロイドの姿を脳内に思い返していた。


(女性だよなアレは...)



軽い興奮状態にシンはなった。


(もし...相手が了承してくれるなら、あのワレメに...)



そう思い込んで自分の陰茎を見ると、既に勃起が始まっていた。


「シン様...」


突然、扉を開けて来たアンドロイドに…


「いきなり開けるなよ!」

驚きながらシンは言う。


「失礼...自慰の途中でした?」

「してない!それより何だ?」

「背中を流してあげようか...と、おもって...」

「良いよ。最初に済ませたから、あと...様とかは入らないから」

「シンさん?シン君?シンちゃん?」

「シンで良いよ。ちゃん付けでは絶対に言わないでよ!」

「分かりました。そう呼ばせて頂きます」


シンは浴槽から出る。その側でバスタオルを持っていたアンドロイドは、軽くシンに掛けて、優しく拭いてあげようとするが、シンは「いいよ、自分で拭くから」と、自分で体を拭く。アンドロイドは、シンの身体を眺めて彼のペニスが勃起しているのを見て。


「陰茎が勃起しているわね。私が手か口で1発抜いて差し上げましょうか?」

「結構!それに、お前さっきベッドインでのプレイは腰を無理に使わないとか言ってただろう」


「ベッドインは、お互いの身体を密着させて行う激しいプレイよ。抜くのはライトプレーであって、簡単に満足感を得られる行為だわ。それにフェラ、クンニなどは相手を軽く満足させる効果があるのよ。無理に我慢するのは、欲求不満を高めてしまうので。ココで私が貴方の陰部を気持ち良くしてあげるわ」


アンドロイドは、シンの陰茎に手を伸ばして軽く撫でている。シンの陰茎から少し我慢汁が出た。


「で...出来るの?」

「幾つかのプレイさせる機能は記録されているわ。椅子に座って下さい」


シンは、椅子に腰掛ける。


「ところでアンドロイド」

「その様な名で呼ばないで下さい」

「名前聞いてなかったけど」

「私の開発コードネームはXM13J・GC2000ータイプRS。ルナ・リスファー、シリーズ0031番。通称『アリサ』と言います」



「覚えられない!」

「そうね...貴方に拾われたから、貴方に新しい名前を付けて頂けると嬉しいわ」

「そう...じゃあ、ジュリって名前はどう?」

「ジュリ...。私はジュリ...」


アンドロイドは、その名前を聞いて目の前に立体レーザーキーボードを照射して、もの凄い速さでキーボードを叩き出す。


「メッセージ確認。データー入力。システムアップロード。コードネーム更新。名称ジュリ。OSメインシステム更新。プログラミングネーム...ジュリ。データ解析ソース更新」


データプログラミング作成途中、アンドロイドはシンを見て

「どんな感じの女性が好みですか?」

と、訪ねる。


「別に...普通の女の子で、優しくて可愛い子が好みかな...」

「普通の女の子...優しくて可愛い子…」


アンドロイドは、再びレーザー気ボードに入力を始める。


「オリジナルプログラミング作成。優しくて可愛い子、データ入力発信。システム稼働開始」


アンドロイドは、キーボードを打つのを止めると目を閉じた。およそ数分程度停止状態になると目を開けると。

「素敵な名前をありがとうね。シン、フフ…」


ジュリと名付けられたアンドロイドは両手を合わせ、瞳を細め首を少し傾げて微笑みながら言う。その表情、仕草、雰囲気は…つい先程までの無表情の女性では無く。まるで無邪気に戯れる少女の仕草そのものであった。ジュリと言う名前を付けた後、アンドロイドに人格と言うのが芽生えたとシンは感じ取った。

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