営業時間外のダンジョンに行ったらどうなるの?
ちびまるフォイ
営業時間が必要なわけ
「装備もばっちり。回復アイテムもストック完了。
ちゃんとハンカチも持ったし旅のしおりもある」
「パスポートは?」
「あ!」
パスポートをバッグに詰めて勇者はダンジョンへと向かった。
「ふふふ、覚悟しろモンスターどもめ。
この俺がやっつけてやるからな!」
勇者がダンジョンにつくと禍々しい入り口の前に張り紙がされていた。
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【 本日の営業は終了しました 】
ダンジョン営業時間
AM10:00 ~ PM5:00
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「はぁぁあ!? なんだよこれ!!」
勇者は怒りのあまり塞がれたままの階段に地団駄を踏む。
「こっちはもう世界を救うって村のみんなに話したんだよ!
営業時間まで待てるか! 開けろおらーー!」
勇者がいくら頑張ってもダンジョンはびくともしない。
まるで3匹のこぶたの狼になったような気分。
「はぁ……はぁ……。くそ、どうしよう。
全力でやれば開けられるかもしれないけど
魔物との戦闘前に体力消耗したくないしな……」
しばらく考えていた勇者だったがふと気がついた。
「待てよ。営業時間外ってことはこれから準備するというわけだ。
つまりこの時間は完全なる不意打ちができるってことじゃないか!」
勇者から「勇ましい」の「勇」の文字を取り上げたくなるほど卑劣な発想。
勇者は正面の入り口を諦めるとダンジョンの近くを見回りました。
「ないな……どこかに出入り口があるかと思ったけど」
勇者は変身魔法で自分をモンスターの姿に変えると
聞こえよがしにダンジョンに向かって叫びました。
「おい大変だ! 外に捕まっている仲間がいるぞ!」
しばらくすると恐る恐る偵察役のモンスターが地面の蓋をあけて外を覗き、
なにもいないことがわかると「チッ」と舌打ちしてダンジョンへと戻った。
「ははん、あそこが入り口かぁ」
巧妙に偽装された地面の蓋をあけて勇者はダンジョンへと入る。
営業時間外ではあるがダンジョンの中は忙しく動き回っていた。
「はいはいはい! みんな並んで! 並んでーー! 点呼!」
「ゴブリンA!」「はい!」
「ゴブリンB!」「はい!」
「ゴブリンC!」「はい!」
「ゴブリンD!」「育休です!」
「えーー、本日ご予約の冒険者一行は2組です。
みなさん気を引き締めていきましょう!」
「「「 おおーー! 」」」
モンスターたちは軍隊のように隊列や作戦を確認。
やってくる冒険者に向けた動きの最終チェックを行っている。
「そっちの罠終わった?」
「悪い、まだかかりそう」
「急げよ。今日は大人数なんだから」
別のモンスターはダンジョンにトラップを仕掛けていた。
常にトラップをつけたままではモンスターが引っかかるからだろう。
「すみません、コボルトなんですがドラゴン遅延で遅れます」
「えーー! 困るなぁ。ちょっと作戦変えるか」
「Aブロック、宝箱の配置終わりましたーー」
「はいどうもーー」
ダンジョン内では着々と柔軟に準備が進められている。
その様子をあっけにとられ見ているだけだった勇者も
自分の職業を思い出したのか我に返る。
「よ、よし。これからどうするかな……。
このまま行っても返り討ちに合いそうだ……」
よく考えてみればこれまでモンスターが順序よく、
ちょうど倒せるくらいの量で立ちふさがってきたのは
モンスター側の作戦であって不意打ちだと勇んで出たらどうなるか。
準備中の魔物たちは不意こそ付かれるが総力をもって排除するだろう。
1対多数はいかな勇者でも相手が悪い。
そこで勇者はこっそり村に戻りギルドで協力者を集めた。
ふたたびダンジョンに戻る頃には遠足のような長蛇の冒険者の列を引き連れていた。
「ふっふっふ。これだけ頭数を用意すれば負けることなど無い。
さらに不意打ちという先制攻撃チャンスもある。これなら勝てる!!」
「でも勇者さん、営業時間外みたいですよ」
「バカ。だからこそ有利なんじゃないか。
ダンジョンの営業時間なんて知ったことか! いくぞーー!!」
勇者の号令で冒険者たちは一斉に非常口からダンジョンへと入った。
勇者が最後にダンジョンに足を踏み入れたとき、周りは一瞬にして暗黒に包まれた。
何も見えず、何も触れない虚空へと放り出された。
さっきまでいたはずの冒険者もことごとく消えている。
何もできない。何もわからないという恐怖感が勇者を襲った。
「ど、どうなってる!? いったい何が起きた!?
知らない魔法か!? いや新手のトラップか!?
だれか! だれか助けてくれーー!!」
\ おいダンジョンのサーバー落としたの誰だよ!! /
営業時間外のダンジョンに行ったらどうなるの? ちびまるフォイ @firestorage
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