神子の試練
夜が明け、森の中を更に進むレウィシア達。その途中で魔物が次々と襲い掛かるものの、レウィシア達は力を合わせて魔物を退けていく。石灯篭に囲まれた石畳の通路が見え始め、進んでいくと、民家が建てられた集落に辿り着いた。そこが、風の神を崇める民族の村であった。
「ここが風の神を崇める村……」
森に囲まれた自然特有の澄み切った空気と風神の加護による神秘的な雰囲気が漂う村の中を歩いていると、火が灯された台座と櫓が設けられた村の中心地に多くの村人が集まっていた。村人は民族独特の衣装を身に纏い、まるで儀式の始まりを物語っているかのような光景であった。
「まあ、この如何にも何かが始まりそうな雰囲気からして何かのお祭りでしょうか?」
メイコが興味津々の様子で村人に近付いていく。すると村人の一人が声を掛ける。
「おやまぁ、旅人なんて久しぶりだね。これから聖風の神子様の試練が始まるんだ」
聖風の神子は風の神に選ばれし一族であり、風の神を崇めし民族の長として先祖代々村を治めていた。この日は聖風の神子エウナの後継者として選ばれた神子の娘ラファウスが一族の仕来りとして、村の西に聳え立つ風神の岩山の頂上で風神の洗礼を受けるという試練に向かう日であり、村人達は試練に向かうラファウスを見送ろうと集まっているのだ。神子の住む場所は村の奥に建つ聖風の社だと聞かされたレウィシア達は社へ向かった。社の中には、エウナとラファウスがいた。
「それでは母上、行って参ります」
ラファウスが深くお辞儀をし、社から出る。
「あら、あなた方は……」
レウィシア達の存在に気付いたラファウスが一瞬立ち止まると、レウィシアはどう声を掛けていいかわからず、そっと会釈した。ラファウスはそれに応えるように会釈して再び歩き出し、境内を出て集まる村人達に見送られながらも試練の場所となる風神の岩山へ向かって行った。
「もしやあの子が神子様?」
「まさかぁ。あんな小さい子が試練を受けるって言うんでしょうかねぇ?」
そんな会話を交わしながらも、レウィシア達は社に入ろうとする。
「待て!」
不意に背後から声が掛かる。現れたのは、ウィリーだった。
「余所者が堂々とこんなところに来るとは何のつもりだ?」
「すみません。私達は旅の者でして、決して怪しい者ではありません。聖風の神子と呼ばれる方に御用があって来たまでです」
レウィシアが冷静に説明するものの、ウィリーは訝しげに見るばかりだった。
「ウィリー。構いません。旅の方達、御用でしたらお越し下さい」
聞こえてきたのはエウナの声だった。快く迎えられたレウィシアは社に入り、風神の像が奉られた神像の間へ招かれる。レウィシア達はエウナに自己紹介を重ね、スケッチブックに描いた絵を差し出しつつも邪悪な道化師と黒い影について聞き始める。
「道化師……黒い影……そのようなものは見た事ありませんわ」
「そ、そうですか」
全く知らない様子のエウナに、レウィシアはどうしたものかと思い始める。
「あなた方は異国から来た旅人のようですが、何やら大きな力を感じますね。宜しければ頼みを聞いていただけますか?」
「頼み?はい、私で宜しければお聞きしますが」
「実は、我々聖風の神子一族の後継者として選ばれた娘のラファウスが先程、一族の仕来りとして試練を受けに行ったのですが……一つ心配事がありまして」
「心配事?」
エウナが抱えている心配事とは、ラファウスの試練の行方であった。ラファウスが向かう風神の岩山にも多くの魔物が棲み付くようになった上、村に吹く風からは邪悪な空気を感じるようになっていた事もあって悪い予感が頭から離れないという。エウナはレウィシア達にラファウスの後を追って護衛をするように頼み込むが、そこにウィリーが割り込んで来る。
「エウナ様!いくら何でも見ず知らずの余所者にラファウスを任せるなんて……」
「ウィリー。この方々はとても良い目をしています。それにあなたは今、ノノアの傍にいないといけないでしょう?」
「ですが……」
「レウィシア。我々神子一族の後継者となるラファウスの事、お願い出来ますか?」
「はい、お受けいたします。守るべきものを守る使命を与えられた騎士として、娘様の力になりましょう」
エウナの頼み事を引き受けたレウィシアを前に、ウィリーは不服めいた様子でその場から去って行った。
「……彼、ウィリーは幼い頃からラファウスと仲が良かった事もあって、ラファウスの力になりたいと考えているのでしょう。でも今は、妹のノノアが病に伏しているのです。彼の代わりに、どうかラファウスの力になって頂きたいのです」
「わかりました。娘様は私がお守り致します」
レウィシアは軽く頭を下げ、ルーチェ、メイコ、ランと共に社から出た。
「おっと。レウィシアさん!私がご一緒するのはここまでですよ!」
そう言ったのはメイコだった。
「あのウィリーさんという方、確か妹さんが病気だとか言ってましたよね?そこで私の出番というわけですよ!」
「出番?」
「私の特性万能薬ならば、ウィリーさんの妹さんの病を治せるかもしれません!そんなわけでラファウスさんのお守りはあなた方にお任せしますよ!」
笑顔で言うメイコに、レウィシアは思わずきょとんとする。
「どんな病気か知らないけど、ぼくの光魔法なら何とかなるかもしれないよ」
「いえ、ルーチェ君はレウィシアさんの手助けをした方がいいと思うわ。レウィシアさんだってそう思うでしょ?」
「ま、まあね……」
「何、大丈夫ですよ!商売とはいえ特別サービスはしておきますから!」
「……まさかお金取るの?」
「勿論!あくまで営業ですからね!」
レウィシア達は唖然とする。
「……こんな人に任せていいのかな」
ルーチェが呟いた。
「うーん……とりあえず、ラファウスの後を追いましょう。私達の任務はラファウスの護衛だからね」
レウィシアはルーチェを連れ、村人から話を聞きながら風神の岩山へ向かって行く。メイコはランを連れて村の観光をしつつもウィリーの家を探し回る。その様子を空中で見下ろす者がいた。道化師の男だった。
風神の岩山には、凶暴な魔物が多く棲み付いていた。古くから生息していた自然の魔物が、まるで何らかの邪悪な力に取り付かれたかのように凶暴化しているのだ。単身で岩山に乗り込んだラファウスは風の魔法を駆使しながらも魔物を打ち倒し、木々に囲まれた険しい岩盤の道を進みながらも岩場を登っていく。
(この風は魔を象徴する風……しかも魔物達が荒れ狂っている。一体何が……)
ラファウスはふと足を止めて目を閉じ、念じ始める。一筋の風が吹き、鎌鼬のような姿を持つ小さな生き物がラファウスの前に現れた。額には宝石のような緑の石が埋め込まれている。それは、エアロと名付けられた風の魔魂の化身であった。
「エアロ。どうやら何かが起きようとしています。もし何かあれば力を貸して……」
エアロはラファウスの声に応えるかのように、風の音のような鳴き声をあげ始める。再び足を進め、襲い来る魔物の群れを風の魔法で吹き飛ばし、長い岩場の階段を登り、山頂に辿り着く。山頂はとても広く、中心地には石柱に囲まれた風神の像と石碑が設けられている。だが、そこには魔物がいた。それは熊の姿をした巨体の魔物で、四肢が真っ黒に染まり、目が赤く光った邪悪な力を持つ凶悪な魔物だった。
(この魔物……明らかに普通の魔物じゃない……!)
ラファウスは立ちはだかる魔物を前に身構える。魔物は唸り声をあげながらもラファウスに迫っていった。
ラファウスの後を追うレウィシアとルーチェは、魔物を打ち倒しながらも岩山を進んでいく。至る所にラファウスによって倒された魔物の死骸が転がっており、レウィシアはルーチェの手を握りながらも入り組んだ岩場を登る。途中で空を飛ぶ鳥の魔物が襲撃してくるものの、レウィシアの剣によってあえなく一刀両断された。だがその直後、ルーチェが足を躓かせて転倒してしまう。
「ルーチェ!大丈夫!?」
レウィシアがしゃがみ込んでルーチェの膝元を見る。膝には血の滲んだ擦り傷があった。
「平気だよ、これくらい……」
ルーチェは傷口に魔力を流し込む。光に包まれると、傷は徐々に消えていく。
「凄い……あっという間に傷が治るなんて」
「これくらいのケガだったらすぐに治せるよ。お姉ちゃんも、ケガしたらぼくが治してあげるから」
「ふふ、ありがとうルーチェ。大好き!」
レウィシアは思わず笑顔でルーチェを抱きしめて、そっと頬にキスをする。ルーチェは少し照れ隠しに俯いたまま笑顔になる。そんな姿を見て母性を刺激されたレウィシアはルーチェを抱き上げる。
「え、何?」
突然のレウィシアの行動に戸惑うルーチェ。
「ふふふ、ごめんね。すごく可愛かったからついやりたくなっちゃって。これが本当のお姫様抱っこといったところかしら?」
嬉しそうな様子で抱っこするレウィシアに、ルーチェはどうしていいかわからない状態だった。そんなやり取りの最中、強風が襲い掛かる。突然の強風に思わずルーチェを守るように抱き抱えるレウィシア。強風によって砂と小石が舞い、とても進めない状況だった。数分後、強風は収まった。
「今のは……一体何が起きているの?」
山頂で何かが起きている。そう察知したレウィシアはルーチェを抱いたまま足を進めた。
強風は、ラファウスの風の魔力によるものだった。エアロがラファウスの中に入り込んだ事によって秘められた風の魔力が呼び起こされ、全身が風のオーラに覆われていた。
「グアアアアア!!」
雄叫びを上げながら牙を剥ける魔物。
「我が風よ、刃となれ……エアブラスター!」
衝撃波を伴った真空の刃が魔物に襲い掛かる。刃は魔物の身体を引き裂いていくが、魔物はまだ倒れる気配がない。魔物は大口を開けると、燃え盛る炎を吐き出した。
「くうっ……!」
ラファウスは追い風を起こして身を守ろうとするが、炎の勢いは防げず身を焦がしてしまう。ダメージを受けたラファウスは態勢を立て直そうとするが、空中に黒い気体の塊のようなものが浮かび上がっているのを発見する。
「あれは……?」
気体は四つに分裂し、それぞれ顔のような模様が浮かび上がっていく。顔が現れた四つの気体———それは、気体生命体に分類される魔物だった。新たに出現した四つの気体の魔物は不気味な音を立てながらガスを放った。毒ガスだった。再び追い風を起こそうとするラファウスに迫るのは、巨体の魔物による体当たりであった。
「ああぁっ!!」
その一撃に吹っ飛ばされたラファウスはもんどり打って倒れる。
「うっ……げほっ」
咳込みながら立ち上がろうとするラファウスだが、気体の魔物が放った毒ガスを吸い込んだ影響で全身に寒気を感じる。
「これは、毒……?」
毒に冒されたラファウスは止まらない悪寒と全身に響き渡る痛みに襲われていた。前方にいるのは巨体の魔物と四つの気体の魔物。ラファウスは必死で反撃を試みるものの、戦況的に危機的状況なのは火を見るよりも明らかだった。
「くっ、このままでは……!」
ラファウスは身体の痛みと悪寒に耐えながらも風の魔力を高めようとした時、巨体の魔物が鋭い爪を持つ両手を上げたまま飛び掛かる。
「お待ちなさい!」
声と共に現れたのはレウィシアだった。空中からの魔物の爪の一撃を盾で防ぐレウィシア。
「どうやら間一髪だったみたいね」
膝を付いて胸を押さえるラファウスの姿を見たレウィシアの一言。ルーチェは即座にラファウスの元へ駆け寄る。
「あなた方は確か……」
「ジッとしていて。毒に冒されているみたい」
ルーチェは解毒魔法アスエイジライトを唱え、ラファウスの身体の毒を治療した。
「身体が……ありがとうございます」
礼を言うラファウス。
「ラファウスと言ったわね。魔物なら私に任せて。今此処にいるのはただの魔物じゃないわ」
レウィシアは剣を構え、魔物の群れに戦いを挑もうとする。巨体の魔物は不気味な唸り声を上げていた。
その頃、メイコはウィリーの自宅を訪れていた。ノノアの病気を治すという万能薬を売ろうとするメイコだが、余所者は信用出来ない性格のウィリーはひたすら突っぱねるばかりだった。
「妹さんが大変なんでしょう?ダメモトでも試してみて下さいよぉ!」
「しつこいな。断ると言ってるだろ。タダでも乗らんからな」
「強情ですねえ。どうなっても知りませんよ~?」
「うるさい!大体お前にとっては妹の病気をダシにした商売目的でしかないんだろ!さっさと出て行ってくれ!」
「はぁ~い……お邪魔してすみませんでしたぁ」
メイコは渋々とウィリーの家から出る。
「全く、実にけしからん商売が思いつくもんだ」
ウィリーは布団で寝込んでいるノノアの元へ向かう。
「あ、お兄ちゃん……」
「ノノア、気分はどうだ?」
「うん、少しは良くなったかな……けど、頭が痛い」
ノノアの症状は熱が少々下がった様子で、頭痛が治まらない状態だという。ウィリーはノノアの額に氷で冷やした濡れタオルをそっと乗せる。
「今日……ラファウス様の試練なんだよね。いつもお兄ちゃんが護衛に行ってるのに、今回は私の為にわざわざ……」
「ああ。気は進まんが、外国の旅人に護衛を任される事になってな。それに、お前を置いていくわけにはいかない」
「そっか……ありがと」
「ちょっと待ってろよ。七草粥作ってやるからな」
ウィリーは台所へ足を運び、貯蔵庫に保存している様々な野草を取り出して七草粥を作り始めた。具材となる野草は、森で採れる薬草だった。数分後、完成した七草粥をノノアの元に運んでいく。
「美味しい……お兄ちゃんの七草粥、好きだな」
「旨いだろう?採れたての森の薬草だからな」
そんな会話を交わしているうちに笑顔になる兄妹。最愛の妹が笑顔を見せた事に、ウィリーは大きな喜びを感じていた。
「あ~あ、どうして田舎の人って閉鎖的なのかしらねぇ」
ウィリーの家から追い出されたメイコは面白くなさそうに呟くと、ランが足元にすり寄って来る。そんなランを撫でながらも、メイコは気を取り直して村の空気を堪能しつつも気ままに散策を始める。何気なしに聖風の社へ続く道にやって来た時、ふとメイコはある人物の姿を見て立ち止まる。メイコが見た人物は、明らかに村人ではない身なりをした者———黒装束の恰好をした怪しい男であった。黒装束の男は聖風の社へ向かっていた。
(あの人……村人じゃないよね?旅人にしては怪しすぎない?)
メイコは好奇心で黒装束の男の後を付けた。黒装束の男が聖風の社の前に来ると、農具を持った二人の村人が立ちはだかる。
「お前は誰だ!」
攻撃的な物言いで怒鳴る村人。黒装束の男は無言で手を広げると、周囲に螺旋状の衝撃波が発生する。衝撃波によって二人の村人は吹っ飛ばされてしまい、黒装束の男は社の中に入って行く。
「ひいっ!?た、た、たたたたた、大変んんんんーーーーっ!!」
突然の出来事にメイコは半ばパニック状態でランを連れてその場から逃げ去った。
「あなたは何者です?」
社に現れた黒装束の男に問い掛けるエウナ。
「ある者の依頼を受けて此処にある封印の鍵を頂きに来た。邪魔さえしなければ命だけは助けてやろう」
頭巾からは赤く輝く目を覗かせた黒装束の男が静かに答える。男の目には邪悪な赤い光が宿っていた。
「なんですって……不埒な真似はおやめなさい!」
エウナが掴みかかろうとした瞬間、黒装束の男は手から空気の衝撃波を放った。
「ごあっ!!」
衝撃波の直撃を受けたエウナは後方に吹っ飛ばされ、勢いよく壁に叩き付けられる。エウナが気を失うと、黒装束の男は風神の像の前に立ち、両手に魔力を高める。
「……カァッ!」
両手から闇の光球が放たれる。光球が風神の像に直撃すると、像は粉々に砕け散った。飛び散る像の破片に紛れるように、光り輝く一つの鍵が現れる。黒装束の男が鍵を手に入れた瞬間、周囲に闇の瘴気が発生し、空中に集まっていく。発生した瘴気が全て集まると、裂けた口と目玉が浮かぶ黒い球体となった影が姿を現した。
———クックックッ、ご苦労だったな……暗影の魔導師セラクよ。
セラクと呼ばれた男は黒い球体に鍵を差し出すと、黒い球体の口から長い舌が現れ、飲み込むように鍵を回収する。
———貴様の役目はこれで終了だ。後の事は好きにしろ。このオレが与えた闇の力を思う存分堪能するがいい。余興の一つとして楽しませてもらうよ……。
不気味に笑いながらも消えていく黒い球体。セラクは破壊された風神の像と気を失っているエウナの姿を見つつ、自身の手を見つめ始める。
「裏切り者の子よ……そして忌々しい人間どもめ……この手で必ず消す。必ずな……」
拳に変えたセラクの手を覆うのは、静かに燃える闇の炎であった。その炎の揺らめきは、内面に抱く静かなる憎しみを現しているかのようだった。
セラクの急襲を目撃したメイコが村人に状況を伝えた時、村は騒然となった。村人の何人かが聖風の社へ状況を確認しようとした時、役目を終えたセラクが静かにやって来る。
「あーーっ!あの人です!あの人が危ない不審者ですよ!」
メイコが大声で騒ぎ立てると、鎌や桑等の農具を持った村人が現れ始める。セラクが立ち止まり、両手を差し出すと黒い炎を伴った竜巻が襲い掛かる。竜巻はあっという間に村人を次々と蹴散らしていき、村の中心地に立てられた櫓が燃え始める。
「ひっ!ひええええーーー!!レウィシアさーーーん!!は、早く帰ってきてええええ!!」
セラクの恐るべき力を目の当たりにしたメイコはランを連れてその場から一目散に逃げ出した。
「何だ?外が騒がしいな」
ウィリーは何事かと思いつつ、窓から外の様子を眺める。その光景は、倒れている数人の村人と逃げ惑う村人の姿。そして燃え上がる櫓と民家。思わず愕然とするウィリー。
「お、お兄ちゃん……」
ノノアが不安そうな表情を浮かべる。
「……ノノア、大丈夫だ。俺が付いてるから」
ウィリーは部屋の奥に置かれた槍に視線を移すが、ノノアの姿を見て傍に立つ。一体何が起きているんだ……。そう思った瞬間、家のドアを叩く音が聞こえてくる。
「誰だ?」
部屋に置かれた槍を手に取り、恐る恐るドアを開けると、黒装束の男———セラクがそこにいた。
「お……お前は!?」
見知らぬ姿の異様な人物を前にしたウィリーは思わず身構える。
「裏切り者の子を探している。この村には人間とエルフの間に生まれた子がいると聞く。名前は……ラファウス、といったか」
「何だと?どういう事だ!?」
ウィリーは思わず槍を握り締める。
「答えろ。ラファウスは何処にいる」
セラクがウィリーの首元を掴む。
「ぐ……っあ……がぁ!」
ウィリーはセラクの手から逃れようと必死でもがく。質問に答えないウィリーに、セラクは忌々しげに手を離しては冷酷な目でウィリーを見据える。
「答えなければ死ぬ事になるぞ」
セラクが言い放つと、ウィリーは槍を手に鋭い視線を向ける。
「黙れ下郎!何が目的なのか知らんが、お前の好きにさせるか!表に出ろ!」
ウィリーが怒鳴りつけると、セラクは誘い出すように家から離れる。
「……ノノア。お前だけは俺が守るからな」
ウィリーはセラクに戦いを挑もうと家の外に出る。セラクは両手に闇の炎を纏っていた。
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