四英雄と不滅の魔導人形〜ぬいぐるみ〜

蜂蜜珈琲

はじまり

 ここに僕が見た世界の記録を綴る。


 この世界『エデヴェル』にはかつて長く続いた大きな戦乱があった。多くの国々が己の威信をかけて争い、多くの血が流れた。いつから始まったか分からないようなこの長い戦争を人は『永年戦争えいねんせんそう』と呼んだ.


 今の平和な世では考えられないけれど、そんな時代がこの世界にはあったのです。


 でも、そんな争いが絶えない時の中で、 僕は四人の英雄に出会う事が出来た。


 一人は『国を作った』英雄。

 ただの領主だった彼は優れた武と知、人を見る才で皆をまとめ、国を興した。彼の作った国は後にこの戦争を終わらせる母国となった。


 二人目の英雄は『国をまとめた』英雄。

 彼は卓越した頭脳を持っていて、とても勤勉家だった。彼の英知によってバラバラだった国々はまとまり、世界の戦乱を一時止める事が出来た。


 三人目の英雄は『戦争を終わらせた』英雄。

 彼女は武も知も、ずば抜けたものは無かったけど、多くの人を惹きつける不思議な魅力を持ち、幼い時から沢山の努力を重ねる娘だった。戦争を終わらせた彼女はその後も、恒久的な平和が続くように一生懸命動いてくれた。彼女が皆を導かなければ、この平和は続かなかったと、僕は自信を持って言える。


 最後の英雄は僕と永い時を過ごしてくれた『親友』だ。

 彼は武の天才だった。彼の武術を超える人間を僕は二百年過ぎた今でも見ていない。僕と彼は大切な人から大事なお願いを託された。その約束は僕一人では果たせなかっただろう。僕と共に戦い、語らい、研鑽し、一緒に願いを叶えた天才。彼が同じ時を過ごすパートナーで本当に良かった。


 彼ら四人がいたから、戦争が終わり、悲しい時代に終焉が来た。それは間違い無い。


 前置きが長くてなってしまった。まずは僕と最初の英雄の出会いから記そう。彼と会ったのは、確か心地よい風が吹く丘から街道を眺めていた時で――




 あぁ、そうだった。僕の事も書いておかないと。


 まず、僕とさっきの親友は俗に言う『不老不死』。過去形なのは、彼はもうこの世にいないからだ。僕達は『不死』では無く、通常の人間より『治癒能力が高く、長寿の命を与えられた者』だった。


 いや、僕の場合は『ヒト』という単語では語弊があるな……。


 そう、僕は人間では無い。前世は、この世界ではある一人の女の子作った『魔導人形マジックドール』だ。 彼女は親友も僕も、大好きだった女の子であり、大切な約束をした二人にとっての大事な人だった。


 その子との約束を果たすために、僕らは世界を旅して、英雄達に会い、いくつもの戦いを経て『永年戦争えいねんせんそう』の終りを見た。


 僕は英雄でも、不老不死でも、ましてや、人でも無い。

 でも、この物語に携わる『モノ』だ。


 では、長い長い物語をここに残そう……


 この物語の主要人物は四人。語り手は

 さっき話した三人の英雄『国王』達と、 僕の親友で一人の英雄『不死の戦士』。

 最後にこの『僕』は見習い魔術師の女の子が一生懸命作り、そして、とある事件から『不滅の体』を得た……


 『くまのぬいぐるみ』だ。

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