しろくま武器店

 オーダーメイドの武器やさん

 あなたの心と顔をみて

 とっておきをさしあげます

 勇敢に戦ってもいいし

 お守りにしたっていい

 どうかお手伝いさせてください

 あなたの敵はなんでしょう?


〈あくびする白黒の熊に〉

 懐中時計なのですが、長針と短針と秒針がそれぞれ剣になるので、そのときに必要なやつを選んで取り出してください。秒針が意外と使い勝手いいです。使うときはちゃんと戦えるサイズになるのでご心配なく。でもしまうときに時間をあわせるのを忘れないようにしてくださいね。


〈退屈をもてあます気ままなおんなのこに〉

 かわいい柄のジップロックの中にマカロンがいっぱい入ってるので、それ投げて戦いましょう。目くらましの閃光が放たれたり、網が出て身動きできなくしたり、ひとつひとつ効果が違うんですが、たまに鳩が出るとかよくわからないのが混じってるので気をつけてください。


〈か弱く強く根をはる花に〉

 ところどころ錆びたルーペで、頭脳戦に徹しましょう。絶好調のときに使えば、敵の居場所だろうが作戦だろうがなんでも見えるらしいです。元気がないときに使うと猫ちゃんが見えて癒されます。一応物理攻撃にも使えます。集光で火を起こすとかそれで殴りかかるとか。


〈帰り道をやさしく照らす夕焼けに〉

 ブーケで戦います。お花の組み合わせでほぼ無限の攻撃パターンを編み出せる、うまく使えばものすごく強い武器。厄介なのが、毎回ブーケを自分で作らなきゃいけないことなんですが……きっと使いこなせるお方ですよね。かすみ草は基礎攻撃力を上げるらしいので、ぜひ。


〈ひなたぼっこする縁側の猫に〉

 一見ただのカメラ、でも入っているのはフィルムではなく七色のリボン。敵をとらえてシャッターを押したら、相手がリボンの色に染まります。例えば赤に染まると、太陽に好かれてものすごく暑くなるらしい。敵以外が写らないようお気をつけください。フィルム切れにも注意!


〈白く初夏に咲くあじさいに〉

 中で金魚が泳ぐガラスペンをどうぞ。いろんな使い方ができます。インクを使って敵の体に呪いを書いてもいいし、接近戦が苦手なら魔法陣を描いて守備に徹するのもあり。ただし金魚が使える魔法に限ります。インクがなければペン先で刺す物理攻撃でなんとかしましょう。


〈重ねつづけるいくつもの紅葉に〉

 アンティークのスタンドライトで、不思議な光を敵に浴びせてやっつけましょう。ボタンはみっつ。灼きつくような太陽の光、やさしい月の光、もうひとつのボタンは誰も押したことがないらしいのでご注意。電源は自分で確保してくださいね、モバイルバッテリーも使えますよ。


〈自分を犠牲にひとをあたためるココアに〉

 いつかだれかが大切に遊んだプリンセスのロッドに、郷愁の魔法をかけておきました。敵の心臓に直接攻撃できる、ちょっとこわい魔法の武器。あなたが過去に想いを馳せるほど大きな威力が発揮できますが、あのときに戻りたいと思ってしまうと魔法はとけるので気をつけて。


〈しなやかに広がる微笑みに〉

 ぼろぼろの動物図鑑が武器です。ページを開いてその生き物のすてきなところを十個言えれば、ぽんと出てきて戦ってくれます。褒めれば褒めるほど強くなるみたいですが、戦いのあとは捕まえて本に戻さないと空白のページになってしまいます。最悪、本の角で殴りかかってください。

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