第130話 ホワイトデー

「桜雪さんにベッタリでー、時間になっても帰らないんですよー、で、結局、仕事を忘れてるんでムカつきました」

 バイト先で僕は話題の中心に上がることが多いようだ。

 パートの人妻が僕に気があるとか?

 それにムカついているパートがいて、それを面白がるパートがいると…

「まぁ、そんな話ばっかりなのよ、で昨日、そんなだったの?」

 おばちゃんのバイトが僕に話しかける。

「そうなんんですか…いや、時間過ぎても、いるな~とは思ってましたが…そういう感じだとは思ってなかった…」

「当の本人が気にしてないんじゃねぇ」

「はい、でも掃除機治してる僕の前にずっといて…邪魔だな~とは思ってました」

「ソレを、あの人が見てて、ムカついてたようなのよ」

「なんだか、ややこしいことになってますね~」


 なんだか、そのうち僕のせいで、何か起こりそうで嫌なのだ。


 そもそも、そんなこと気にもしてないので、僕は、そのおばちゃんにバレンタインデーに貰ったチョコのお返しを渡したのだ。

「冬に車ハメたときに出して貰ったときのお礼だから、いいのに」

 そう言っていたが、バレンタインデーに貰えばお返しはするだろう。

「そうなんですか? バレンタインデーに貰ったからホワイトデーにお返ししたんですけどね」


 こういうのが…きっとまた、展開を産むんだろうな~と思うと、なんだか飽きないな~とも思う反面、怖いな~とも思う。


 まぁ、旦那と違う相手と、程よい距離感で疑似恋愛程度の好きなんだろうけどね。


 昔、占い師に言われたことを思い出した。

「キミはモテるんだよ…だけどね、自分が好きな相手とは結ばれないんだ」

 ソレって…不幸なんじゃないだろうか?

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