第123話 出禁とかあるんだ

 まぁまぁの安ホテルでバイトしている。

「風呂掃除行ったら人が入ってるんだけど」

 一応、大浴場は時間が決まっている。

 その時間で清掃するのだ。

 塩素は壊れているので濃度は0であるのだが…清掃はしなければならないらしい。

 馬鹿ホテルの優先順序は理解に苦しむが、見た目は綺麗にしておいて、中身は雑菌だらけでいいということらしい。

 それはさておき、たまにいるのだ、ほとんど外人なのだが…今回は日本人の女性、60代と30代くらいの親子である。

「出禁の客らしいよ」

「なんで出禁なのに宿泊できたの?」

「なんかフロントが受けちゃったみたい」

「ヒマだから出禁でも入れちゃうみたいな?」

「さぁ…なんか時間外に勝手に入って、ぬるいだのと文句言ってたんだって」

「さすが出禁…」

 とにかく常識がないようで、こんなレベルのホテルですら出禁指定されちゃうのだ。

 そして翌日、

「あの出禁客、12:00までいるんだって」

 別料金で12:00まで入れるのだ。

「文句ばっかり言うくせに長居するんだな」

「ホントはもう一泊するつもりだったみたいだけど出されるみたい」

「最初から取らなきゃいいのに…」

「凄かったよ、冷蔵庫には朝食会場から勝手に持ち込んだ食料が投げ込まれ、浴衣の袖からは無料の味付け海苔が大量に出てきたそうだ。

 喰わないのに、タダとか聞くと漁りだすタイプ…親子でだ。

(なんか『通』みたい…)


 正面玄関でチラッと見かけたけど、まぁ…そんな顔してるわと思った。


 ちなみに出禁客はラブホの場合はハッキリと言われる。

 ホテルは満室ですと断られるそうです。

 心当たりがある方、出禁指定されてますよ。

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