第90話 得はしてないのだが

 車検を出した店から電話があった。

(なんだ? まだ金がかかるのか?)

 貧乏人には車の維持は悩みの種だ。


「はい…」

「すみません、実は…」


 どうも重量を間違えて1ランク上の金額を頂いたそうだ。

「そうなんかい?」

 まったく気づいてなかった…

「で? おいくら?」

 2600円くらいだそうで、来店すれば返金するということだ。

「じゃあ、都合のいいときに伺います」


 2600円か…地味に嬉しい額だ。


 260円なら、どうでもよくなる。

 26000円なら、何やってんだと腹が立つ。


 丁度いい額なのだ。

 別に得したわけではないけど、地味に嬉しい額だ。


 人間なんて、そんな程度のものなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る