第15話 -11 知り合いとの繋がり

 



 森を抜け、昨日と同じ場所に多くの受験生たちが帰還していた。係りの案内に従いチームメンバーの点呼を取り、プレートと素材を提出した。


「確かに、この森にはステュムパリデスは生息していますが本当に提出してよろしいんですか? 素材はお返し出来ませんよ?」


「はい、大丈夫です」


「わかりました、受理します。学科試験の採点と合わせ、合否は郵送にてお知らせします。お疲れ様でした」


 受理されてホッと胸を撫で下ろした。これでわたしの試験は終了だ。こんな達成感は初めてかもしれない。清々しさから空気がとても爽やかで美味さを感じる。


 ミヤコさんとヒューマンの二人、名前もわからずじまいだったが三人はどうやら持込んだ素材を提出するようだ。あくびをして気だるげでまだお酒の匂いが残っている。クロウくんは巨大なトカゲを仕留めていたみたいでその宝石のような尻尾、ソウジくんはニヤつきながらゴブリンを出してきた。私は小さく悲鳴をあげメンバーに慌てて頭を下げお礼をいい、皆でねぎらい合うこともなくチームから離れた。チーム戦らしい戦い方はしていないけれど丸一日共に居たのでちゃんとお礼を言いたかったが、ゴブリンを見ると本能が逃げ出してしまう。


 アマミちゃんを探そうと辺りを探る。まだ人がごった返しているのでなかなか見つけられない。受験生たちはみんな疲れた顔をして、傷だらけだがみんな達成感から朗らかな顔をしている。救護室を覗くと手当を受ける人が数人いて、アマミちゃんの姿はなくホッとした。昨日の模擬試合の時の救護室よりそこまで忙しくはないようだ。私も擦り傷だらけだったが大きな怪我がなく済んで何よりだったと思う。


「怪我の手当ですか?」


 振り返ると昨日手当をしてくれたキキョウさんだった。私の顔を見るとおや?と言って朗らかに微笑んでくれた。今日は眼鏡を着用している。


「君は昨日の……無事に試験は終わったみたいだね」


「はい! 昨日はありがとうございました、おかげで試験を終えることができました。友達が来てないか確認しにきたんですが、ここにはいないようですね」


「そうでしたか、今日は昨日と違い暇で何よりです。あなたも仲間に治していただいたんでしょう?」


「はい、ヒールの治し方はそれぞれなんですね。傷口を舐められてビックリしてしまいました」


 キキョウさんが微笑んだまま固まってしまった。どうしたんだろうかと思っていると私の手を取りヒールをしてくれた。顔や体の擦り傷が消えて行く。


「……治し方は様々ですが、本来は人や物に触れるだけで浸透されます。このように、その方も触れるだけでヒールはできるはずですけどね」


 カッと顔に火がついた。恥ずかしさと同時に怒りが湧いてきた。やられた、自分の無知のせいであんなことを許してしまうなんて。まだこの世界で知らなければいけないことが沢山ありそうだ。それにしても許すまじソウジくん。


「い、田舎者で知りませんでした! アハハ、あありがとうございます」


 キキョウさんは困ったように笑い、眼鏡を外した。どこかで見覚えのあるフレームだ。これは試験勉強を教えて貰った時クチナワさんが使っていた眼鏡と全く同じではないだろうか。同じエルフだし、歳も近そうだ。


「あの、もしかして司祭をされているクチナワさんをご存知ないですか?」


「ええ、クチナワはアカデミーからの旧友です。もしかして芽衣さん、ですか?」


「はい芽衣です! クチナワさんには受験勉強を教えてもらったり、いっぱい助けてもらってます! その時に眼鏡をつけていたので、もしかしたらと思って」


「クチナワからお話はよく伺っていますよ、お会いできてとても嬉しいです。『形からはいる』と言ってこの眼鏡も強引に奪われましてね、最近の彼は目に見えて楽しげでどんな子か興味がありました」


「完璧に遊ばれているだけです」


 そういうと優しくほほえんでくれた。本当に穏やかに笑い、こちらまで気持ちが優しくなれる。癒し効果が溢れ出ているような人だ。この世界で人の繋がりが感じれて私はとても嬉しくなった。


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