雨雲の上

勝利だギューちゃん

第1話

今日も、雨が降っている。

雨は、あらゆる生物が生きていくうえでとても必要。

人間とて、例外ではない。


しかし、さすがにこう何日も続くと、うんざいする。


「いつまで、続くのか」

ふと想う。


雲の上は、広い空が広がっている。

行って、遊んでみたい。

そう想い、床に着いた。


「・・・起きて」

むにゃむにゃ


「・・・起きて」

その声に眼が覚める。


「やあ、ようやく起きたね」

そこには、ひとりの少女がいた。

「君は?」

「私は、レイ。君たちの言葉でいえば、妖精ね」

「天使じゃないのか?」

「うん。そこまでは・・・ね・・・」

どういう意味だろう・・・


「で、そのレイさんが、何の用?」

「レイでいいよ。君の願いを叶えに来たわ」

「願い?」

「雨雲の上に行きたいんでしょ?連れて行ってあげるわ」

「夢みたいだな」

「夢だもん」

なんですと?


「今、君は夢を見ているの。だから、何をしても自由」

「明晰夢ってやつ?」

「少し違うけど・・・どうする?行く」

夢なら、何でもありだ。


「うん、連れて行ってくれ。僕は・・・」

「知っている。雅哉くんでしょ?」

「ああ」

手を握られる。


「行こう。雅哉くん。雨雲の上の世界へ・・・」


心の中は雨模様。

どしゃぶりの雨が、降っている。

でも、心の中にも。空はある。


そして、その空の上は、いつでも太陽が、照らしている。

気付かないだけで、雲の隙間から、陽が差し込んでいる。


止まない雨はないのだ。


「雅哉くん、ここが君の雲の上」

レイに言われる。


「雅哉くん、雨は確かにうんざりする。

でもそれは、いつかうるおいをくれる」

「うるおい?」

「今は辛くても、いつしかそれは、君の糧になる。だから、前を向いて」


これは夢の中、レイはいつか消える。

でも、なぜか、温かい気持ちになった。


眼が覚めた。

本当に夢だったようだ。


外は、久しぶりの快晴。

小鳥のさえずりが、聞えた。


「雅哉くん、いつかまた、雨が降りだしたら。私が君の傘になる。」


心の中が雨の時、だれかが傘になってくれる。

でも、そこで自分ががんばらないと、意味がない。


そして、僕も傘になる。


傘という字には、人がいる。

レイにまた会えた時、胸を張れるように、僕は前を向く。



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雨雲の上 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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