【猿蟹】
猫と蜘蛛
【猿蟹】
【猿蟹】
猿と蟹は、正式に付き合っていた……わけではないが
とにかく蟹(♀)が猿(♂)に惚れていた
猿も猿で、何となく将来コイツと一緒になるんだろうなぁ……と、二人の間に出来た子供の名前など考えたりしていた
そんな感じの良い仲だ
二人は(『二人』という呼び方が正しいかはこの際どうでも良い)、よく一緒にデートを重ねていた
デートといっても、ただぶらぶらと丘に登って景色を見たり、海に行き砂浜で追いかけっこをしたり、といった感じの中学生っぽいデートだ
(高級車で予約を入れていたレストランに行き、軽く食事やお酒を済ませホテルへGO!!……なんて関係には、まだ至っていない)
そしていつものようにプラトニックなデートを楽しんでいた二人は、辺りに落ちていたモノを拾い集めては見せ合いっこしていた
『おっ、オニギリでねか! 良いもの拾ったな蟹江』
「ふふふ、でしょ? 猿雄さんのソレは何?」
『これは柿の種じゃ、土に植えれば大きな柿の木になり沢山の柿の実がなるぞ。そしたら子や孫の代まで幸せに暮らせる』
「わぁ凄い」
『なぁ、蟹江のソレと、この柿の種を交換しねえか?』
「良いわよ、猿雄さんにあげる。ハイ」
猿はオニギリを受け取ると半分にし大きい方をぶっきらぼうに蟹に差し出した
『ん』
「えっ? 猿雄さんにあげたのだから全部食べて」
『二人で食った方が美味かろう?』
「あっ、じゃあそっちの小さい方で」
『良いから、お前が大きい方食え』
「ありがとう」
猿は大きく口を開けオニギリを頬張った
蟹は米粒を一粒一粒丁寧にハサミで口へと運ぶ
『美味いな』
「うん、とっても美味しい」
『おっと、そうだった。蟹江、この柿の種も半分こにしないか?』
「え? どういうこと?」
猿は口の中のオニギリを全て飲み込むと真顔になり蟹に体を向けた
『俺と二人で一緒に大きな柿の木さ育てて、沢山の子供や孫達に囲まれて幸せにならねか?』
「?!」
『俺と結婚してくれ』
「……はい」
猿と蟹は、誰からも羨ましがられる仲睦まじく子沢山の笑顔溢れる温かな家庭を築き、大きな柿の木の下でいつまでも幸せに暮らしましたとさ
【猿蟹】(完)
【猿蟹】 猫と蜘蛛 @nekotokumo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます