生きがい
さいねりあ
第1話
突然、その国は“大崩壊”した。
年金とか、伝染病とか、そういうレベルではない。
その中心に立っていた少女は不敵に笑った。
警察官や特殊部隊が総出でかかっても、取り押さえることはできなかった。
攻撃はすべて無効化され、謎の力により、送られた部隊はすべて壊滅した。
それからしばらくたったある日。
辺境の小さな村に珍しく客が訪れた。
村の者は、その場にあるもので精一杯の歓迎をした。
ある村民のこどもが客に、願い事を乞うた。
「この先にある山の薬草をとってきてほしい」
盗賊が街道を牛耳っているのだという。
客は二つ返事で了承した。
翌日、こどもと客はその山に向かい、薬草を採取した。
盗賊たちはその帰りを狙い、襲ってきた。
客は、“眠らせる籠手”で盗賊を無力化し、返り討ちにした。
最後の一人が悲痛な叫びをあげた。
「金がなくて仕方なくやっているのだ。この国がいけないんだ」
客は懐から金を出し、盗賊にくれてやった。
盗賊は泣いて感謝した。
村に帰り、薬草を渡すと村人たちは神を崇めるかのように扱い、喜んだ。
こどもは無様な姿を見せまいと、涙をこらえながら、
「ありがとう」
と、何度も口にした。
薬草を必要としていたこどもの親も、村人も、何かお礼がしたいと申し出たが、客はすべて断った。
そして次の朝、客はまた旅に出た。
やがて何年かたち、国はあるべき姿を取り戻しつつあった。
ほぼ元の姿を取り戻した首都の中心で、旅から戻った少女はこう言った。
「大崩壊」
生きがい さいねりあ @Cineraria-novel
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