仕切り直し



 さすがに反省したのか、タイチはひとり正座してシュンとしていた。お尻が痛くて動けなかったとも言うが。


「あ、マリアもだ! 髪の毛も服も濡れちゃってる! ねえ、着替えようよ。私の小さいから駄目だけど、お姉ちゃんの服なら着れるから、貸してもらえるように頼んであげる! でもその前にシャワーしない? あの紅茶、砂糖入りでベタベタして気持ち悪いしさ……」


 その時、部屋の扉が開いてアイの母親が入ってきた。家を揺るがす振動に、何事かと駆け上がってきたのだ。


「なあに、これ!!」


 母親は部屋の惨状に驚いていたが、そこは大人だけあって冷静だった。すぐそこにある危険を察知した。


「まあ大変! コップが割れてるじゃない! 踏んだら危ないわ! アイ、お友達をすぐに下に連れてい行ってあげて。ここはママが片付けるから」


 彼女はそう言うと、私を含め全員を早々に勉強部屋から追い出してしまった。


 どうして良いか分からず、顔を見合わせる仲間たち。


「はい、注目! ママが言ったでしょ? 男子たちは下のリビングに行ってて。私とマリアはお風呂行ってくるから。ねえ、タイチ……」


「何だよ、アイ」


 疑いの表情で見てくる少女に、タイチが警戒した声で訊ねる。


「マリアがいるからって、のぞいちゃ駄目だゾ!」


「は? な、何いってんだ! だ、誰が……お前たちなんか!」


 のぞくもんか! と言いかけて、口をつぐむ。マリアが聞いているのに気づいたからだ。


 女心はややこしい。危なく口を滑らせて「お前らなんか見たくない!」と言えば傷つくだろうし、かといって本音を言えばグーでパンチされてもおかしくない。


「ふ、フン! おい、みんな。さっさと下に行こうぜ! ていうか、僕らもびしょ濡れだから、家もどって着替える? 僕ので良ければ貸すけどさ……」


 階下に消えていくタイチの声。イチヤとトシカズを連れて、一階に行ってしまった。


「私たちも行こっか」


 マリアはアイの手を引っ張って、着替えを探しに姉の部屋へと入って行った。

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