食料調達をするためのグループ分け




「落ち着く場所も決まったことだし、色々と必要なものを持ってきた方がいいよね」





 リーダーのように人をまとめるのが好きな桐島さんは、当たり前のように次の行動の指示を始めた。


 しかし的をいている内容だったから、誰も文句を言わず了承する。




「それじゃあ、グループ分けしようか。ここの建物の広さを考えると、二人組の方がいいけど……それじゃあ、心もとないだろうからね。三人組になろうか」




 心もとないと言った時に、彼の視線がこちらに向けられた気がする。

 いや、きっと気のせいだ、たぶん。


 このメンバーの中で、僕が一番足でまといだなんて、そんな事実はまだ突き付けられたくない。




「それで、そのグループ分けをどうするか。何か意見があれば聞くけど、どうかな?」



「好きな人と組みたいってなったら、絶対余る人出てくるでしょ。それは可哀想だし、じゃんけんとかそういうので決めれば?」



 だから、こっちを見ないで欲しい。

 川田さんも僕に視線を向けて、そんなことを言ってきた。


 桐島さん以上に、それはあからさまで、僕は居たたまれなくなってしまう。

 しかし、まだ認めるわけにもいかず、必死に気が付かないふりをしていた。



「じゃんけんねえ。それも面白そうだけどなあ。今回は、俺と雫石ちゃんと変態君で組むから、それでいいだろう」



 気分はまるで、仲間外れにされているボッチだった。



 そんな気分は、剛埼さんの言葉に救われる。

 色々と場があれる前に、名前を言ってくれたから僕は嬉しさから顔が輝いてしまった。



「まあ、あなたがそういうのならば良いですけど。それじゃあ、こちらは一階から二階までを調べるんで。そちらは三階から上をお願いします」



 何だか桐島さんは、機嫌が悪くなる。

 もしかしたら、剛埼さんと一緒になりたかったのかもしれない。


 しかし、最初に一緒にいたのは僕達なのだから、そうなるのも自然の結果だ。



 僕は選ばれた嬉しさから、少し自信を取り戻していた。



「分かった。食料とか、使えそうなものを集めてくればいいんだろお。時間は、正午までってところかあ?」


「そうだね。そのぐらいでいいか。正午まで、ここに色々と集めるっていう形でよろしく」



 良い形で話はまとまったみたいで、グループ分けした人で集まる。



 僕はそっと剛埼さんに近づき、耳打ちした。



「……ありがとうございます」


「ああ? 何のことだあ?」


 彼はとぼけていたけど、耳が赤くなっていたから、たぶんわざとだった。

 僕はもう一度笑って、彼の隣についていく覚悟を決めた。



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