第390話―その日はいつの間にか訪れる。大学入学共通テストが2―

かくして二人が行ってからというもののしばらくは平静ではいられないながらも落ち着くだろうと楽観して執筆を始める。


「…ダメだ。小説が書けない」


これほど冬雅と真奈が、どんな気持ちで受験を挑むのかって思考はそっちに巡らしている。

どれだけ俺は二人をおもんばかっていたというのか…ここまでいくと病的なほどだ。


(何度目になるんだ。二人の前では心配させないように考えないようにしていたのが爆発して

四苦八苦して、どうするんだ)


こうなればPCを閉じて別の事をしよう。気分転換に窓拭きでもすれば、そのうち落ち着くはずだ。

―苦悩から逃れようとして俺は受験場所からほど近い喫茶店にいた。


「ご注文のパフェです」


アンティークな木製の机に置かれたのは細長いにグラスに入れた生クリームやお菓子などの具を山盛りデザートのタワー。


「ありがとう」


運んでくれた女性給仕さんが男性が一人でそれを食べるのかと顔に出ていたが別段とくに気にしない。

さてパフェを食べようではないか。崩壊しないよう気をつけて口に入れると味覚をつかさど味蕾みらいがとろける甘さに歓喜している。これは、まさしく甘くて上手い!パフェだから突然の話だが、甘党には至福の極みなのだ。


(窓拭きから、どうして喫茶店でパフェを食べているのだろうか俺は)


このイチゴの味は、すこぶる美味しい。それと少々の苦いコーヒーを後から飲むと格別な味わいとなる。この組み合わせは最高ですな。


(冬雅と真奈をどうしているか心配して勢いで、ここまで来てしまったなぁ。地図アプリやお店のレビューを見てから入店したが)


至福の時は終わりを迎えた。名残惜しい、しかし仮におかわりをした暁には体重が大変な事になる。

それが、甘党としての誘惑との戦いとなる。基本的に甘党は、お酒は好まないのだ。織田信長もそうであったように。


(確か今日は大学入学共通テストだと言っていた。今までと違うと言っても何度もするようなものじゃないから、彼女たちの視点なら過去を比較なんて出来ないから)


くっ、諦めないといけないか…おかわりを。別の日にもパフェを食べよう絶対に。

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