第341話―花恋と炒飯を―
休日明けの放課後を花恋は俺の家に訪れてきた。まさか開けるとは思わなかったと顔を
「もしかしてヒドイ顔をしていた?」
そうなれば何をそこまで驚くのか追及しないといけないという好奇心による使命感が起きる。
髪がボサボサか、部屋着なのか考察して妥当だと至ることになったのは顔だ。整えていない姿も何度か目撃されているし大きな変化でもなければ驚かないはずだ。
その大きな変化は時には本人が気づけないケースもあって言われてから気づくのもある。
考えた結果が顔なのだが目の下にくまがある程度か教えてもらわなければ。
「ヒドイ顔なのはいつもの事だけど」
「意外にも辛辣だった。余計なダメージを受けたのは置いといて、どうして驚いた聞いても?」
「そりゃあ驚くよ。午後4時に東洋お兄ちゃんがバタンと開けたら」
ドアを開けるジェスチャー付きでアメリカ人のような説明をした花恋。
「俺がいるのが…疑問?
あー、なるほど。仕事をしていないのが気になる事か」
「はい!そんなところで……はい?
東洋お兄ちゃんそれって大丈夫なの!?生活費とか光熱費が」
それは自分のように焦燥を抱く反応だった。何故か当の本人である俺は楽観視している体たらく。
ここ最近は訪れる頻度も減ってはいるので探すべきかもしれないなぁ。
「厳しいだろうけど、ゆっくり探すつもりだよ。そういうのは子供が気にする必要はないよ。
上がっていく?」
玄関先で話すよりは中に入ったほうが、ゆっくり話せると考えたのだが花恋はまるで意表を突かれたような顔になる。
頬は紅葉ごとく染まり顔を下に向けて俯いた、その姿は恥らっているのが明白。
「なっ、なななっ!!」
これは…言葉をまともに紡げないほどに堕ちいている。
「お茶やお菓子を出すよ。うーん落ち着くまで待った方がいいかな?」
「………そ、それ。どうなの返事として…きょ、今日は東洋お兄ちゃんだけだよね?」
「ああ、今は俺だけだけど…あっ!
そういう意味で誘ったじゃなく字面通り招いているだけなんだ」
さっきまで自分の発言を省みれば迂闊だったと遅まきながら気づく。
花恋が警戒するのは当然だ。
JKが社会人(ニート)と家で二人になる状況になるのは激しい動揺するに決まっているじゃないか。
「し、知っているから!ヘビを見たネコみたいにしないで、そろそろ中に入ろう」
花恋が赤い顔のまま、そう急かされたので靴を脱ぎ洗面所で手洗いを済ませてから居間に入る。
ブルーレイのリモコンを手にすると彼女はアニメを観ようよ!っと同世代に気さくに声を掛けられた。俺の方が年上だぞ!というプライドは遥か彼方に消えているので快諾して視聴するのは鬼滅の刃のようだ。
…深く考えないようにしていたが花恋は俺の事が好きなのだろうか?
だとすれば断る返事を検討しておかないといけないだろう。
夜の時刻になると花恋は夕食を食べたいと満面な笑みで応えたので
二人分を作る流れになった。
フライパンを振っているとスマホが通話音が鳴る。
「東洋お兄ちゃん電話だよ」
「ああ。分かった」
テーブルの上に置いたスマホを見れば相手は実の弟である移山からだ。ちなみに花恋はラインで真奈達とやり取りをしている。
その花恋は料理が出来るまで、おとなしく待っていたが鳴ったスマホが気になる様子だ。
その視線には応えずに電話を取る。
「なかなか音沙汰なかったけど忙しかった?」
第一声はいきなりの質問。挨拶など省いて入れるのは長い付き合いによるものだと思う。
『なんかトゲを感じる言い方だな。
まぁ、いいけど…久しぶりに明日は休みで今から帰るから晩ごはんを頼むぜ兄者』
「ああ、了解した」
いきなり帰宅すると連絡するのは今日が初めてじゃないので慣れている。
『じゃあ』
「ああ」
今から3人分を作らないといけないか。
「親しい相手みたいだったけど、新しい女の人かな東洋お兄ちゃん?」
電話を切った俺に、花恋は小首を傾げて話し相手が誰なのかと笑顔で訊いてきた。
しかし笑みの裏では沸々と怒りを感じるのは何故だろう?
「…えーと、弟が帰るみたい?」
やや怖じ気ついた俺は敬語で答える。
「ふーん、弟がいたんだ。それって私がいない方がいい問題?」
まるで息を吸うような気楽さで明るく振る舞っているが花恋を少しは理解して見えてくるものがある。言外に
不安や心配という負の感情的を与えないとする気遣いがあって
責任を感じさせない気配りが含まれた普段通りに振る舞っているようにも見える。
「ああ、大丈夫だよ。手遅れだから」
「じゃあ安心……えっ?手遅れってなんなの!?」
実弟は事情をもう知っているなどと説明をする必要はあるかなと漠然的に迷いもあったが隠すような事はしなくていいかと至って説明をすると頬を引きつって顔になっていた。
時間が経過をするのは早く感じるのは年齢が重ねても思う事だろう。
月が仄かに地上を照らす時間になって移山は帰ってきた。帰路に就く道で飲み屋に寄ったか少しアルコールの匂いと顔が赤かった。
「帰ってきたぞ!」
「酔って帰ってきたか…とりあえず、おかえり移山。それで紹介したい人がいるのだけど」
「兄者そういう所を直さないと永遠のハーレムエンドになるぞ」
そんなエンディングがあってたまるかと自覚はしているので強く否定が出来ずに苦笑したままツッコミをする。
リビングにドアをくぐり目の前でスカートの端を優雅に上げるというメイドのような挨拶をした花恋がいた。花恋なのかな?別人だと納得する振る舞い。
「初めまして、東洋お兄ちゃんとは恋人関係である
「…美しさのあまりに見惚れてしまった。丁重な挨拶に感服していました。山脇移山と申します」
心に思っていないだろうとなぁと傍観して俺が思ったことだ。沈黙が流れたのは引いていたからだと思われる。
夕食はすでに俺と花恋は食べた後で移山は一人で食べる事になった。
「お嫁さん候補が増えたなぁ」
もう何かこだわりがあるのか問い質したいと思ってしまう。向かいに俺は座って話し相手に付き合っている。
ちなみに花恋は好きなバラエティ番組があるとテレビの前にあるソファーに座りながら見ている。
片手にはスマホを弄りながらのマルチタスクで。
「夕食のチャーハンだけどレンジで加熱したカボチャを途中からフライパンに一緒に炒めたんだけど
思った以上に味がマッチして自信作だけど、どうか評価を教えてほしい」
パラパラにさせる隠し味にスプーンを水に調味料と一緒に入れてはいる。
「微妙だな」
「そうか」
芳しくなかったようだ。話題は早く尽きてしまい移山は黙々として俺は皿洗いしようと席を立った。
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