第338話―金髪サムライに戦いを挑まれる時代―

今日は誰も家に遊びにこないので、

買い物のついでに神社に寄ってみる

ことにした。

境内は数年前とほとんど変わらずにあって年季を感じさせられて、修繕費が無いのかなと

考えながら賽銭箱さいせんばこまで足を向ける。賽銭は御縁があるようにと五円玉が入れるのが条例的にあるけど、そんなにいないだろうと集計結果はどうなんだろうと小さな疑問のまま入れると目を閉じる。掌を2回ほど叩きながら神頼みをする。


(冬雅と――)


よりを戻す?いやそんな関係ではなく、話をしたいなどの、それを望んでいても願いたいわけではない。

なら小さい名前の知らない神社と神に願うのは…。


(冬雅が幸せでありますように)


目を開いて変化などあるわけがなく、きっと心の整理とか安定させるためにやっているんだろうなぁと

自虐的な笑みが溢れた。


「ははっ」


周囲に人がいないからこそ出来る失笑。他の人から耳にすれば内容から不快にさせる。

ここに訪れるのは何かを願って来ているのが大半だからだろうから。

ここへ来たのは回顧心による記憶の掘り起こしと近くにあるのなら

効果が僅かなにあるかなと

利己主義エゴイストな理由と無いよりもあるかなと空虚な目的で。


(さて、そろそろ帰ろうかな)


振り返って出入り口となる鳥居をくぐる。無宗教で信心深くもないけど神が通る真ん中を避けて右から通って帰ろうと進むと階段を

上りきった金髪碧眼の美少女。


(制服からして学校帰りのついでに神社でも用があったのかな)


金髪碧眼の美少女に心を引き寄せる力はあるだけの容貌があるのだけど既に俺の中では冬雅や真奈にしか誘い込まれないように

なっていたようだ。第一が可愛いとかじゃなく行動原理が気になってしまっているし。


(さて、明日は誰がくるのやら。

真奈か花恋は確実にやってくるだろうなぁ。お菓子のストック足りるかな……うんっ?)


金髪美少女さんはスマホをカバンから慣れた手つきで神社を撮り始める。

どうやら神社巡りを趣味とする人だったようだ。フッと何かが不安になり、俺は鳥居をくぐり抜けて5歩ほど歩いてから後ろにある

神社に向き直り会釈をする。

社殿や鳥居を出る際に、お暇するというのも必要だと本で書いていた1ページを思い出して。

そこで左肩に軽い衝撃を受ける。


「うひゃあ!?」


さっきの神社巡り趣味と思しき美少女にぶつかったようだ。振り返ると後ろから転倒しそうになってバランスを取ろうと抵抗するが途方となり地面に転んでしまうのは

数秒もいらないだろう。


「うわぁ!?危ない」


相手の方が危ないのに焦るのは何故か俺は焦ってしまい両手を彼女の後ろに回して抱き寄せるように力を入れる。


「うきゃあ!?」


次に彼女が驚いたのは咄嗟に抱き寄せてきたことによるもの。

今は一方的に俺が彼女をハグしているような客観的に見ればそうなる形になっている。


「うわぁ!?ご、ごめん。つい…」


ラノベ主人公ような少年みたいなセリフをこの歳で使うことになるとはなぁ…。出っ張りがあるから抱き寄せたときの記憶が消えそうにない。

それも含めて、失礼極まりない事をした。


「い、いえ…助けていただきありがとうございます」


「い、いや。そんな事を言ってもらうことは…」


たじたじな返事をしたのは予想外な反応だった。確かに助けはしたものの、彼女からそれば不運な事だと思う。地面に転ぶかセクハラまがいな助けを選択肢があれば、

悩んで一時的な痛みを伴う方へ選択するのかもしれないし。


「いえ、そんな事ありませんわ。もし、よろしければ…付き合ってくださいませんか」


「えっ?付き合う……ですか?」


うーん、告白?いや何だか淡泊しているぞ。肌が白いから赤らめるのは顕著に現れる。抱き寄せられたときは赤くなって咎めるような羞恥心な反応を示していたけど、

この言葉を発して赤面はなっていない。

決定的なのは一途な想いがない…ここで告白された経験が役立つ時が来るとは。


「はい。俺で――私でよければ」


「や、やりましたわ」


ガッツポーズしていた。言葉遣いから判断と偏見で、お嬢様みたい?


「えーと、確認ですけどカップルとかの付き合うじゃないですよね」


「はい。少しだけたわむれに付き合っていただくだけで」


まさか遊ぶという言葉じゃなく戯れと言いましたか。そんな驚く俺も俺だけど、彼女も似たような

ものだと心の中で思った。

一緒に同行することになった。

近くで見ると金髪お嬢様の制服の気品があって彼女自身にも所作が

丁寧であった。


「ここに三途さんずの川を入れればいいのですね」


「いえ、それは亡くなった後にある死後の世界で支払うものですよ」


「まぁ、そうなのですね」


「六文銭と言われていて今の金額からすると150円から300円のどっちかだっと思う」


「そ、そんなに安いのですか!?」


賽銭箱の前でそんな珍妙なやり取りを繰り広げたものの楽しかった。

髪の色や青い目からして外国人だから変な作品に感化されて日本の文化や歴史を脚色した方へ覚えたのだろう。

そして社殿を出て目的は果たしたようなので鳥居をくぐり抜けて頭を下げる。もう一度と俺も

下げる。神が居れば滑稽こっけいとかで明るい笑みを浮かんでいたことだろう。


「貴方のおかげで最高の一日となりました。お名前を伺っても?」


「いや、名乗るほどじゃないよ」


このセリフ一度でも言ってみたかった。カッコよく意識して使って恥ずかしくなったけどね。


「それでは運命の人の出逢いが…フフッそうですわ。将棋で決闘しましょう」


「いえ、お気になさら…ず………えっ!?将棋で決闘。えーと少し待って。整理させてほしいのだけど」


「これが闇のデュエルです」


「なにを!?」


不敵な笑みを浮かべて右手を前に突き出し指を広げたカッコよさ重視の謎のポーズを決めた。…反応が困る。

薄々と感じていたが我を強く持つ人であった。そのこだわりは回避するのも難儀で不可避。

似たような人と何度も接しているので経験則による心に鳴る警鐘を耳を傾けておけばよかった。


「それでは場所を変えましょう。それでは行きましょう」


「あっ、はい。いや聞きたいことが」


ほとんど問いには答えずたどり着いたのは将棋道場と書かれた看板と立派な外装…うーん看板とオシャレすぎてアンバランスだね。


「さぁ、入りましょう」


呆気に取られてばかりだったけど中に入って数え切れない呆気に取られる。入ってみると中は広々としていてヨーロッパのお城ような豪奢だった。えーと、ここは

なんの舞踏会でしたけ?


「お嬢様こちらの方は?」


受付らしき人が俺を一瞥だけで不快な表情はしていないものの言葉は隠しきれなかった。まぁ、耐性があるので平気です。


「うーん、お友達ですわ」


「…そうなのですか」


無理があるね。けど問題がないと判断したのか普通に通らせてもらい金髪美少女さんは受付から左にある広い空間から奥にある窓際の机に腰を下ろす。


「さぁ、始めますわよ」


「はい。よろしくお願いします」


去年に真奈と大局した経験が活かすことになり圧勝まではいかなくても辛勝した。


「うひゃあー。よもや鬼のような攻め方をするものよ。

まことに強いでござるなぁ」


(大局中に出ていた口調がおかしいままなんだけど…)


もう心中の中だけでツッコミをする。忖度など一切なく俺が勝ったのは大人気な方かなと罪悪感が少しある。


「おっと!名をまだ名乗っていませんでしたね。せっしゃの名は…ペネロペ・レードル・サファイア

と申しますです。お見知りおきを」


なんていうかスゴイ名前だな。

完全に日本語は過去形も混ざっていて微苦笑をした。彼女、ペネロペさんはニコニコまま小首を傾げた。


「ご丁寧にどうもそれがしの名は

山脇東洋やまわきとうようと申します。…以後お見知りおきを」


ペネロペさんの呼吸に合わせるように恥ずかしいものはあって脱出するための裏道に逃げたい。

憮然ぶぜん(以外な成り行きに驚き、ぼうっとしている様)としていたが気にいたのかニコッとすぐに眩しいほど満面な笑みを向ける。


「ええ。優しいお兄様」


琴線に触れるものがあったのか嬉々としていた。そして…兄として敬意を込める人が増えました。

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