第302話―別れは自然と流れていく―
カーテンの隙間からは、おぼめく
いつものように比翼に抱きつかれ寝息を立てている。もし冬雅に告白されていなかったら平常心でいられたかどうか。
安眠の邪魔にならないよう手をどけようとしたが――
(ん?今日は簡単に離してくれない)
どうにか起こさないよう細心の注意で白磁な指を優しく触れ離そうと試みる。
数分後、俺
「あっ!お兄ちゃんと比翼おはよう。二人が同時に起きるなんて珍しいねぇ」
「それは脱出戦で失敗して…とりあえず、おはよう冬雅」
「あんなに強くされたら起きるから。冬雅おねぇちゃんおはよう」
「…えーと不穏な言葉を耳をしたけど。何かあったのか聞いてもいいかな?というか聞きたい!」
俺は比翼を起こしてはいけない正真正銘のリアル脱出ゲームに負けてしまった。ミステリー要素が
まったくないけど。一分も掛からない経緯を説明をすると冬雅は
好奇心が
「ねぇねぇ!お兄ちゃん、明日には
「それだけは駄目だから絶対にぃ!?
冬雅おねえちゃん添い寝していたら間違いとか起きそうだよ」
心配ご無用だろう。自制心が仙人レベルに達している俺なら…
と
「えーと、お兄ちゃん突然で驚かせるかもしれないけど当分は、会えなくなります。受験で忙しくなるからってこれからは毎日と定時で帰ってくるようなんです」
冬雅は複雑そうにして言い終えると牛乳を一気に呷る。
なるほど冬雅の両親が帰ってくるのか。それは吉報だと思うのだが。
「そうなのか?急な報せで驚いたけど冬雅の事を大事に思っている。いい両親さんだね」
「家族
よかったねぇ冬雅おねえちゃん!」
「うん、ありがとう……」
それなのに最初の頃みたいに笑顔を作って嬉しそうにする。何か憂いがあるのだろうか。
「冬雅…浮かない顔をしているが何かあるとか。相談してくれないかな?」
「…だ、大丈夫だよ」
伏せていた顔を上げると
「これから凄まじく不快な発言するよ。純愛系のラブコメみたいな恋愛をしたいなぁって思っていたんだよ。これからも冬雅とそんな
ラノベみたいな恋愛がしたいかなって」
「それはお兄ちゃんらしいけど。わたしとですか?」
頬には薄明かりに染まり首を傾げて上手く伝えられずに困惑させた。
「つまり…純愛小説みたいな夢みたいなデートとか手を繋ぎたいと思っているんだ」
「……お、おお、お兄ちゃん!!
気持ちは嬉しいですけど唐突にどうしたのですか?落ち着いてほしいです」
光沢感の頬から火傷したんじゃないのかと錯覚するほど真っ赤になる。しどろもどろ冬雅に構わず続ける。
「長く暮らしている内に恋が芽生えたのか、俺は冬雅を女の子から大好きな人に意識するようになったんだ」
「そ、そうなるとお兄ちゃんは、わたしが…好きなの……ですか?」
「大好きだよ」
限界だったのだろう。冬雅は俯いて羞恥心と歓喜で悶ている。
「これが俺が、ずっと隠そうとしていた気持ちだよ。これで少しはフェアになったかな?
冬雅それで隠そうとしている事を教えてくれないか?」
「……お、お兄ちゃんがかなぐり捨てるほど情報じゃないですよ。……ママとパパが家にいる時間が増えるから、交際じゃなかった!同棲していた事や相思相愛を隠さないといけなくなって。
しばらくは家に遊びに行くのも難しくなると思います」
なるほど、なるほど。淫行条例に触れるだけの事をした俺に気遣い冬雅は俺の家へ門をくぐらないということらしい。
イチャイチャ難しく気軽に会うのさえも難しくなるわけだ。
「二人でいい雰囲気に悪いんだけど、見ているわたし的にはイライラするんだけど」
「えへへ、ごめんねぇ比翼」
時は経つのが早くソファーに座り3人で夕暮れ時になるまで夢中にテレビで見ていた仮面ライダーオーズ。
10周年記念でユーチューブで公式で視聴可能。夕食の準備に取り掛かると今日は比翼も手伝ってくれるらしい。冬雅は橙色のエプロンをして隣でいつものように一緒に作ってくれる。
出来上がるとテーブルに運び終えれば夕食の時間 だ。
「えへへ、お兄ちゃんもう一度でいいですので大好き!って言ってくれませんか?」
それからの冬雅は思い存分にイチャイチャしようと気迫を感じるほど果敢に挑んできた。可能な範囲で応える。夕食後のゆるいディナータイムにソファー座り仮面ライダーオーズの続きを視聴する。
それにしても10周年記念事で俳優さんのインタビューがあるのは
驚いた。それに何度もオープニングを何度も見ても飽きない工夫を感じる。戦闘シーンやストーリーも良くて欲望を考えさせられる哲学的なメッセージも素晴らしい。
後は紫のグリード
シリアスシーンをコミカルにさせる存在感。
「10周年前の作品をお兄ちゃんと肩を並べて見るのなんだか嬉しいです」
積極的な冬雅は好意を隠さない満面な笑顔に俺は「そ、そうだな」と上擦って返事をした。
「そうだ。冬雅おねえちゃん名残惜しまないようにおにいちゃんの膝上に乗ったら?」
俺の膝上に座っている比翼はそう提案した。乗るじゃなくて座ると細かい指摘はしない。大抵の日本人は日本語を間違えているし。
そんな事じゃなく、どうしてそんな提案と理由を尋ねようと口を開こうと思ったら――
「う、うん。そろそろ進展しないとお兄ちゃんにも悪いよねぇ。
…す、座りますねぇ」
冬雅は上目遣いで恥らって言う。
大好きだって毎日と告白をするのに普通に乙女な反応をされて俺の鼓動が高鳴るのが自分でも分かる。
「…えーと無理しなくてもいいんだよ」
特に断る理由が浮かばず途切れるような静止をかける。
「む、無理していませんよ。
お兄ちゃんとイチャラブしたいのは、わたしも同じですから」
結局それで論破され俺は膝上に冬雅が座り視聴を続ける。途中から内容が入ってこれず、ずっと膝上の柔らかい感触だと変態的な感想を隅に置くことに戦うのであった。
午後21時、冬雅は荷物をまとめて家に帰ろうと旅行カバンを背負う。玄関まで迎えようと腰を上げ比翼は見たいバラエティがある事で二人。靴を履き終えて振り返る。
「出来れば明日にも会おうと思いますけどラインで
お兄ちゃん愛しています!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!」
「ふ、冬雅。告白は一度だけで十分だから!ほら、落ち着いて」
「いえダメですよ!今の内に大好きだっていっぱい言わないと後悔します!大好き!大好き!大好き!」
それから何度も同じ言葉の連呼に満足した冬雅は手を振る。
「えへへ、お兄ちゃんまた明日」
「あ、ああ。また明日」
心臓は早鐘のように鳴っていて形容し難い多幸感でいっぱい。脳裏に笑顔が焼きついて消えそうにない。
リビングに戻ると比翼は振り返り片手で招き猫のようなボーズで来てと振る。従ってソファーを叩き座ると膝上に座る。どうやら冬雅のために提案したのだろうか。
「おにいちゃん今日はわたしの
「?ああ。俺が出来る範囲で条件になるけど」
「てへへ。それなら頭をなでなでを」
「了解した」
比翼は、いつもの緩みきった笑みになり次々と我儘を応えていた。
さすがにキスとかあったがすぐに断った。
12時に回ると
わずかに手が震えている。
「比翼?何かあったのか」
「う、ううん。何でもないよ…おにいちゃんわたしの事は好き?」
「妹としてなら」
「アハハ!なにそれ」
詳しい話は別の日にしようと思い俺は
そして翌日、目覚めると
比翼の姿はなかった。
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