第288話―短い夏休み期間つづき7―
風鈴が思い出したように涼し気な音、そして身に感じるは熱がこもったような風。
空いた窓からミンミンと一生の時を懸命に命の灯火を燃やす
正午の食事は流し
夏の息吹を触れながら今日も今日とて暑くて平和であった。
いや頭痛を覚えるような出来事がなくて久方ぶりに穏やかな時間だった。
「お兄さんもしかしてですけど素麺をあまり取れなかったとか?」
「これだけ人数がいれば最後の位置にある人が少なくなるのは仕方ないものだからね。ダイエット中だから食べるのは控えようと思っていたところだから別に気にしてはいないよ」
すぐに噛まずに飲み込むものって太りやすいと何かの本で知識にあった。
冬雅達が満足そうに楽しんでいるし。それだけで俺も楽しいかった。あと、冬雅が試食が原因で体重が気になるのは事実なわけで。
「実はお兄さんの分を取っておきました。ですので口を開けてくれませんか?
「えっ!俺の分を?」
「うん。振り返ってみれば箸を持ったままでしたので。それで」
「ああ、なるほどね」
不憫に感じた真奈が俺の分を取る。慈悲深い彼女らしい行動に俺は頬を緩めないようにする。
真奈は箸で麺を器用に
あれ?これ間接キスにならないかな。
「じ、自分の箸で食べるから」
「はい?・・・・・っ――!!?
そ、そそそ、そうですねぇ。ワタシの箸でも構わないのだけど」
最後は聞こえなかった体で貫き、真奈は俺が持つ皿へ移す。移し終えると距離をわずかに縮める。
どうやら去るという選択は存在していなかったようだ。先まで冬雅と比翼で年相応で
「えーと楽しんでいるところ悪いのですけど、お兄ちゃんの分まだありますよ。実は真奈と考えが同じで」
冬雅も俺のために用意してくれたようだ。冬雅達が夏休みに独特な空気に浮かれたように無邪気な姿を傍観していたつもりだったけど
二人とも俺の方へ一瞥していたの
だろう。
心がツーンと温まり、そんな当たり前な優しさに琴線を触れるには十分だった。
「いつも見ているんだね冬雅は。喜んでいただくよ」
「はい!最初に大好きなお兄ちゃんを見ないわけがないんだよ。えっへへ」
多幸感が溢れんばかりな笑みを浮かべ、このタイミングで最低は一日一回をする告白に鼓動が高鳴り始める。
そんな事を露知らずか箸を持ち器用に素麺を挟み――
「はい、あーん」
「やっぱりか。間接キスはまだ早い」
「か、間接キスは本番のキスにカウントされないよ。えーと、だから遠慮なしで口を開けてもいいのではと思うのです。はい」
だが引き下がろうとしない冬雅。
「待った!冬雅おねえちゃんがするならわたしだってする!」
比翼が静かに黙っているはずがなく参加しようとした。気づいたが
どうやら比翼も俺の分と自分の分もある。どうやら後で一緒に食べる計画していたのだろう。いや、計画とほどではないか。
ここ最近は
「・・・じゃあワタシも」
「真奈も!?何度も言うようだけど間接キスはしないからぁぁーー!!」
つい魂の絶叫をするが3人は想定内の返事だったのだろう。ずいっずいっと近づいてくる。
えっ、これ食べないいけない流れなのか。真剣な3人に俺は、どうしてこんな展開になっているんだと愚痴りたい気持ちだった。
そして部屋に響く渡る来訪者の報せ。
誰かは知らないがインターホンの音には助け舟だと感謝する。
「誰かが来たようだ。ああー、誰だろう?」
我ながら大根芝居すぎる言葉に玄関に向かう。3人は制止かなくドアを開けると大きな旅行カバンを背負った香音の姿だった。
どうしたのだろうか?
「真奈様と暮らしていると聞いたんだけど本当なの?」
「そ、そうだけど」
「まったく・・・どれだけ変態なのよ。私も泊まらせてもらうから」
「え、えぇぇぇーー!?それはいくらなんでも」
「ここに女子高生と交際している危ない大人がいます!」
「わ、分かったから大きな声はやめてください」
泣き寝入りするしかなかった。
フッ、香音まで泊まる事になるなんてアポぐらいは取るのは常識だと思います。はい。俺の場合は日常生活ではまったくそうしていないが。
「あ、あはは。こんにちは」
「久しぶりだねよねぇ!香音」
「おひさ〜香音おねえちゃん」
冬雅、真奈、比翼の順で歓迎の言葉にイライラしていた香音は年相応な笑みを向ける。それたまにでいいので俺にも優しさを向けてほしい。
「あっ、おにいちゃん実は香音も泊まりに来てよって誘ったんだよ」
どうやら首謀者は比翼だったようだ。
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